法定労働時間である1日8時間、週40時間を超えて労働させると時間外労働の割増率35%以上で賃金を支払わなくてはなりません。土曜日などの所定休日に出勤すると、この割増率が適用されることがあります。では、その週に年次有給休暇を取得した場合はどうなるのでしょうか?社労士がズバリ解説します。

こんにちは。社会保険労務士の志賀です。

今回は「有給休暇中に休日出勤、割増賃金はどうなる?」についてお話をします。

まず、この割増賃金とは何か。割増賃金とは、「法定労働時間」である、週につき40時間を超えて労働させた際に、通常の賃金に上乗せして支払う賃金を指します。

また、「法定労働時間」は原則として1日につき8時間、週につき40時間までであると、労働基準法に定められています。

もしこの1日8時間週40時間を超えて労働させたならばそれは時間外労働ということで、25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。

それから週に1日は必ず休日を与えてくださいという事も労働基準法に定められています。これを法定休日と言いますが、この法定休日に労働させたならば35%以上の割増率で計算した割増賃金を支払わなければならないと決まっています。

例えば、日曜日と土曜日がお休みで1日の所定労働時間が8時間の会社があったとします。そして、ある方が月曜日から金曜日まで所定労働時間の8時間働き、その間、平日の残業はなかったと仮定します。

この方が、本来休日である土曜日に出勤して6時間働いたケースを考えてみましょう。

まず本来の休日は日曜日と土曜日で、日曜日は休めているので、日曜日がこの方の法定休日となり、週1日の休日が確保されていますので、土曜日の労働は法定休日労働にはあたらず、賃金も35%増しにはなりません。

ところが、月曜日から金曜日まで8時間×5日間勤務ですでに40時間働いており、なおかつ土曜日に出勤して6時間働いたということは、この6時間は法定休日労働ではないので35%の割増は要らないけれども、25%割増の時間外労働にあたります。

例えばこの方が仮に時給1000円で働いていたとすると、1000円×1.25×6時間で7500円になります。

では、「水曜日に有給休日を取った週に休日出勤をしたら、どういった計算方法になるのか?」を考えてみましょう。

こちらも、日曜日と土曜日がお休みで、1日の所定労働時間が8時間であり、その間、平日の残業はなかったと仮定します。

ここでも日曜日の休日により法定休日は確保されていますから、割増賃金35%ということにはなりません。

こちらのケースでは、月曜日と火曜日に所定労働時間である8時間ずつ働き、水曜日に年次有給休暇を取得、そして木曜日と金曜日も8時間ずつ働き、本来お休みである土曜日に出勤して6時間働いたと仮定します。

この土曜日に働いた6時間の給与の計算がどのようになるか?これが今回のテーマです。

本来だと月曜日から金曜日まで1日8時間働き、1週間で40時間働くことになりますが、今回は水曜日に年次有給休暇を取得したケースです。

年次有給休暇を取得した場合は、基本的には働いたと見なして通常の賃金が支払われます。

ですから、計算上は年次有給休暇を取得した水曜日は働いたとみなして賃金が支払われることになるのですが、この土曜日に働いた6時間が40時間を超えている部分なのかどうかという判断をするときには、実際に働いた時間である、実労働時間を使います。

水曜日の年次有給休暇は働いたと見なして賃金はもらえますが、実際は働いていないので、実労働時間上は32時間しか働いていないことになり、土曜日の勤務時間を合わせても38時間となり、法定労働時間である40時間の枠内に収まっています。

そうすると、この土曜日の6時間は時間外労働にはならず、25%の割増賃金の支払いは必要ないという事になります。法定休日は確保されていますので、もちろん35%の割増賃金の支払いも必要ありません。

ですから、実際の賃金計算に置き換えると、時給1000円×6時間で6000円、先ほどのような割増率は要らないということになります。

割増賃金が必要になる時間外労働かどうかの判断における法定労働時間40時間、この40時間を超えた部分が時間外労働になるわけですが、この40時間というのは実労働時間で考える、というのが今回のお話のポイントになります。

そもそもなぜ時間外労働に割増賃金などの制約があったりペナルティがあったりするのか、それは時間外労働が過ぎると体を壊すからですね。

ですから、その観点から実労働時間を使って考えるというわけなのです。

今回は「有給休暇中に休日出勤、割増賃金はどうなる?」についてお話をしました。

少しでも参考になれば幸いです。

執筆者
志賀 直樹

社会保険労務士法人ジオフィス代表

300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。

保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員

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