こんにちは。社会保険労務士の志賀です。
今回は、「事故欠勤とは何か?」についてお話をします。
私も社会保険労務士として毎日いろいろな会社の社長さんとお話ししています。
その中で、「就業規則を見せてください」と言ったときに、10年以上前に届け出をし、それ以降改訂も届け出もしていない就業規則を見せて頂く時があります。
そういうものを読んでいくと、最近の就業規則にはあまり見ない表現がされていて、ちょっと意味が分かりづらいという事があります。
事故欠勤もその一つです。
今回は、その事故欠勤についてお話をしていきます。
本題の前に、「うちの会社では事故欠勤なんて言葉使わないよ」ということであれば、今回は読んで頂かなくても大丈夫です。
ただ、この志賀チャンネル、最初は中小企業の経営者総務担当者向けに始めたのですが、段々と従業員の方や、社会保険労務士を目指している方も見てくださっているようですので、そういった方々は今回の内容を知っておくといいのではないかな、と思います。
さて、年季物の就業規則の中に出てくる「意味の分かりづらい言葉」として、『勤怠常ならず』というものがあります。
これは、解雇事由または懲戒事由のところに見られる表現で、遅刻・早退・欠勤が多くて勤怠不良である、という意味です。
ちょっと味のある表現ですが、こちらはまだ皆さん何となく勘で分かるのではないかと思います。
ただ、また年季物の就業規則を読んでいると出てくる場合がある『事故欠勤』、こちらは人によっては意味が分からないのではないかと思います。
この事故欠勤というのは、傷病欠勤以外の欠勤のことを指します。
理由がよく分からない無断欠勤は論外ですから、今は置いておきます。
普通、欠勤の理由は、「怪我をしました、病気になりました、だから会社に行けません」といった傷病ですよね。
そうではない、自己の都合による欠勤が事故欠勤だと、こういう意味なのです。
そもそも基本的には、労働契約を結んでいる従業員には欠勤する権利がありません。
年次有給休暇をはじめとする、各種の休暇制度を活用して仕事を休むという事は出来ますが、何らかの理由で「今日は休みます」という権利は、実はありません。
ただ、病気や怪我はやむを得ないと会社は黙認しているわけです。
ですから、こういった傷病欠勤以外は原則認められないはずなのですけれども、それ以外の欠勤もありうると、それを事故欠勤としているということなのです。
また、『事故欠勤』の文字を見て「交通事故」を連想しがちですが、交通事故に遭って怪我をしたのであれば、それは傷病欠勤になります。
さらに、『この事故欠勤の「事故」という字は「自己」ではないの?』と思われる方もいらっしゃるかと思います。
確かに意味はその通りです。傷病以外の自己都合でのお休みですので、本当は「自己」の字を使った方が分かり易いのかもしれないのですが、時代物の就業規則の中には「事故欠勤」と書いてあるのですね。
それではこの「事故欠勤」が就業規則の中のどこに出てくるかですが、これは休職について定めた条文の中によく出てきます。
例を挙げると、休職について定めた条文の中に、
「次のいずれかの場合は休職とする。」
- 私傷病による欠勤が〇日以上続くとき
いわゆる私傷病欠勤といわれるもので、ほとんどの休職はこのパターンです。
ただ、就業規則によっては、その次辺りに、
- 事故欠勤が〇日以上続くとき
と書かれていたりします。これがいわゆる事故欠勤休職です。
そもそもこの事故欠勤という言葉自体が法律用語ではありませんので、厳密にこう使うなどと決められているわけではないのですが、一般的には、「事故欠勤が一定期間の以上続いた場合に、会社はその方を休職にする」という取り扱いが規定されている場合があり、それを事故欠勤休職と呼んだりする場合があるのです。
「事故欠勤がそんなに長く続くのはいったいどういう場合なの?」と疑問に思われるかと思いますが、典型的な例は、逮捕・拘留です。
社員さんが何らかの嫌疑をかけられて逮捕・拘留されたときに会社に出勤できなくなってしまう、そういった場合に会社はその方を休職とする、と、いう規定が置かれている場合が、かつては多かったのですが、最近はあまり見ないですね。
今は、傷病欠勤での休職がほとんどを占めていて、最後に「その他会社が必要と認めたとき」と書いてあり、ほとんどは私傷病欠勤を使ってしまうというのが最近多い運用だと思います。
年季の入った就業規則を読ませて頂くと、『勤怠常ならず』や『事故欠勤』といった言葉や規定が出てくる場合がありますが、これはこういう意味なんだ、とこの機会に覚えて頂ければと思います。
今回は、「事故欠勤とは何か?」についてお話をさせて頂きました。
少しでも参考になれば幸いです。
執筆者
志賀 直樹
社会保険労務士法人ジオフィス代表
300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。
保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員