「相手がパワハラと感じたらパワハラになる」とほとんどの人が思っています。テレビやインターネットで当然のように述べられていて、皆さん疑いなく信じ込んでいるようです。本当にそうなのでしょうか?社労士が解説します。

こんにちは。社会保険労務士の志賀です。

今回は、「相手がパワハラと感じたらパワハラになる?」についてお話をします。

今回は、「相手がパワハラと感じたらパワハラになる?」という『質問』というよりもう、皆さんこういう風に信じ込んでいるのですね。

何の疑いもなく、相手がパワハラと感じたらパワハラだよね、と皆さんそう思っています。

テレビなんかでも有識者の方が堂々とこういう風に言っているのを見かけますし、インターネット上でも、相手がパワハラと感じたらパワハラになっちゃいますよ、と言われています。

あまりにもテレビやインターネット上でこういう事が言われているから、多くの人が何の疑いもなく信じ込んでいるという状況なのですけれども、これは違います。

今回はこのお話をしていきます。

まず、パワハラに関して詳しく話していくと長くなってしまいますので、それは別でやるとして、簡単にどういうことをするとパワハラに当たるのかを触れておきますと、①「優越的な関係を背景とした言動」、②「業務上必要かつ相当な範囲を超えている」、③「労働者の就業環境が害される」、この3つを全部満たしたときにパワハラになります。

一つずつ見ていきますと、①が「優越的な関係を背景とした言動」、優越的な関係というのは立場が上という事ですよね。一般的には上司が部下に、または先輩が後輩に、逆もあり得るのですが、ここではそれはちょっと置いておいて、そういう優越的な立場をバックグラウンドにした言動だということが一つ。

そして②が「業務上必要かつ相当な範囲を超えている」言動であること、要するに業務上必要な注意ではない、必要性が無いような、例えば人格攻撃という事ですね。気に入らないから怒鳴りつけるとかです。

業務上必要であったとしても、必要以上に厳しい言動、例えば大声で怒鳴りつけるとか、頭を引っぱたくなんて言うのは論外ですし、必要以上に長時間説教することも「業務上必要かつ相当な範囲を超えている」ことになります。

そして③ですね。この③の「労働者の就業環境が害される」というのは少し分かりづらいので、言い換えてみました。

「就業環境が害される」というのは、その就労者が精神的あるいは肉体的に苦痛を受けて不快な思いをしてしまい、能力を発揮できなくなるなど、業務に支障が出る状態のことを指します。

例えば、立場が上の人が必要以上に厳しい注意をしてしまって、それによって、注意をされた労働者の方が精神的もしくは肉体的に苦痛を受けて不愉快な思いをし、正常な労務ができない状態になってしまうということですね。

この3つを全て満たすもの、「優越的な関係を背景とした言動」であって、「業務上必要かつ相当な範囲を超えている」ものであり、「労働者の就業環境が害される」もの、これがパワーハラスメントになります。

ですから、相手がパワハラだと感じたら全てパワハラなんていうことはある訳が無いのです。もしそうなら、上司の方は何の注意も指導もできなくなってしまいます。

そうすると組織の規律が滅茶苦茶になってしまうし、組織が崩壊してしまうということですから、相手が「それってパワハラですよね」とか言いさえすれば全てパワハラという事はあり得ないという事を理解して頂きたいです。

ですから、「相手がパワハラと感じたらパワハラになる?」の答えは、「なりません」となります。

ちょっと順番に見ていきますと、②「業務上必要かつ相当な範囲を超えている」という事ですが、逆に言えば、業務上必要であって相当な範囲を超えていなければ、もうその時点でパワハラではないのですね。

①~③の全てを満たしてパワハラですから、②を満たしていない時点でパワハラではなく、業務上必要であって相当な範囲を超えていない、適切な注意・指導は当然パワハラではありませんよ、ということです。

これもまたケースバイケースだと思いますが、例えばその「相当な範囲」とはどこまで大きな声で言ったらその範囲を超えるのか、それが屋内のデスクワークの場なのか、屋外の建設工事の現場なのかによっても違ってくると思いますし、一概に線を引くことはできません。

それからですね、この③の「労働者の就労環境が害される」は先ほど言い換えましたが、就労環境が害されているか、ここはその労働者の主観で判断されるわけではありません。

どういう風に判断するかと言いますと、平均的な労働者の感じ方、これが基準になります。

分かり易く言いますと、社会一般の労働者が同じ環境で同じことをされたらどう感じるか、ということです。

その人が個人的にどう思ったかだけではなくて、世間一般で見て、一般常識として同じ状況で同じことをされたら他の一般的な労働者の方はどう感じるだろうかと、主観基準ではなく、客観的な基準で判断します。

ですから、その労働者の方がパワハラと感じたら直ちにパワハラということはありませんよ、ということになります。

いかがでしたでしょうか。今までほとんどの方が「相手がパワハラと感じたらパワハラになる」と勘違いしていたのではないでしょうか。

今回この解説をお読みになって正しく理解して頂けたか思いますし、管理職の方が業務上必要な注意・指導を、パワハラだと言われることを恐れて躊躇していたのだとしたら、それはもう逆に職務怠慢となってしまいます。

もし皆さんが上司や管理職と言われるような立場の方であれば、もうパワハラと言われることを恐れずに、業務上必要な注意・指導は適切に、そして十分に行っていただければと思います。

今回は、「相手がパワハラと感じたらパワハラになる?」についてお話をしました。

少しでも参考になれば幸いです。

執筆者
志賀 直樹

社会保険労務士法人ジオフィス代表

300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。

保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員

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