雇用保険法施行規則の改正により、令和7年4月から、保育所の「落選狙い」について審査が厳格化されます。育児休業給付金の延長手続きはどのように変わるのでしょうか?社労士が分かりやすく説明します。

こんにちは。社会保険労務士の志賀です。

今回は、「令和7年4月から、保育所の落選狙い、審査が厳しくなります。」について解説していきます。

今年の3月に雇用保険法の施行規則が改正されて、令和7年4月から保育所の落選狙いについて審査が厳格化されます、というお話を今回はしていきます。

まず育児休業給付金についてご説明をします。

育児休業給付金というのは、育児休業開始から180日目まで、休業前賃金の67%が、それ以降は50%が雇用保険の方から支給される、という制度です。

育児休業がいつまで取れるかといいますと、原則は子が1歳になるまで、です。

ただし、この時点で保育所に入所できない等の理由がある場合には、最長で子が2歳になるまで延長できるという決まりになっています。

ということは、原則、子が1歳になれば育児休業は終わりになり、育児休業給付金の支給も打ち切られることになります。

ところが、保育所に入れなかった等の事情があれば、延長の手続きを取って育児休業給付金の受給も引き続き受けられる、とこのような制度になっています。

問題になっているのは、子が1歳になった時に、育児休業を延長したい、給付金も引き続き受給したいという風に考える方がいらっしゃって、その場合には保育所に入れなかったことが延長の条件になっていますので、保育所に申し込んだ体にして、それで落ちた、とそれで落選狙いと言われたりしますけれども、そういったことが行われているわけですね。

延長手続き

まず、1歳になった時点でどういう風にすれば延長の手続きができるかという事なんですけれど、その育休を取っている親、従業員である親ですね。その親が自治体(市区町村)に対して保育所の入所申し込みをします。

そして、ここで審査が行われて、もし受かったら入所なのですけれども、落ちたら自治体はその親に対して保留通知書というものを発行します。これは不承諾通知書なんて言われたりもします。

これが言わば、保育所に入れなかった証拠になるのですね。

その親はハローワークに対して延長の申し込みをするのですが、その時の添付資料としてこの保留通知書が必要なのです。

ハローワークに対して、保留通知書を添付して延長の手続きをすると、ハローワークが延長させるかどうかの適宜を判断してその結果を通知する、とこういった流れになっています。

改正点

これが来年4月からどういう風に変わるかと言いますと、まず、ハローワークに育児休業の延長を申し出る際に添付する資料に追加があります保留通知書に加えて申告書というものが必要になってきます

申告書というのは、入所申請を出した日、辞退をしていないか、申し込んだ保育所の中で最も近い保育所への通所時間がどれくらいか、通所時間が30分以上の場合はその保育所を選んだ理由等を書く必要があり、ハローワークはこの申告書の内容を精査して延長の適宜を判断する、とこういうことになります。

それからもう1つ、ハローワークが自治体に対して、保育所に申し込んだ親が「落選したい」「辞退する」などの落選希望があったのかどうかを確認する、ということも追加されます。

実際、落選希望は多いのです。

今回の省令の改正には、一つは自治体の業務逼迫があると言われています。

なぜかというと、育児休業を延長したい、落選したい親が、「どこに申し込めば落選できますか?」という問い合わせや、保育所に入れることになった場合に、「落選したかったのにどうしてくれるんだ」という苦情が自治体に殺到しているようなのです。

こういったことで、自治体の方も困ってしまうという状況があり、今回の省令の改正に繋がったということがあるようです。

今はインターネットに情報は溢れているので、例えば最も人気のある遠くの保育園1つにだけ申込みをするとか、それが言わば落選狙い行為であるということで、そうすると本当に入所したい人が入所できないといった弊害も指摘されているわけなのです。

ですから、来年の4月からこういった落選狙いに関しては審査が厳格化されると、こういったことなのです。

実際には、育児休業を2歳まで取得したいといったニーズはたくさんあります。

ただ、その延長は、今の制度ですとあくまで保育園に入所できなかった場合に限られるため、どうしても保留通知を手に入れるために、皆さん落選狙い走らざるをえないということになっているのですね。

そうすると、この落選狙いを不正行為として切り捨てるだけでいいのか、そもそも制度を変えていった方がいいのではないか、こういった意見もあるのですね。

希望すれば2歳まで育児休業を取れる、それによって育児休業給付金も受けられる、とこういう風に制度を設計する方がいいのではないかという意見もあります。

その一方で、そうすると人手不足に拍車がかかるとか、2歳までお休みしてしまうとキャリア形成に悪影響が出るのではないか、また、中小企業さんや零細企業さんにおいては、正直育休を2歳まで取られると困ってしまうという声も聞こえてくるかもしれません。

この問題については引き続き多角的な議論が必要ではないのかな、という風に思います。

今回は、令和7年から保育所の落選狙いの審査が厳しくなる、について解説をしました。

少しでも参考になれば幸いです

執筆者
志賀 直樹

社会保険労務士法人ジオフィス代表

300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。

保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員

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