こんにちは。社会保険労務士の志賀です。今回は「健康管理を目的とした過重労働時間の計算式」についてお話をします。
時間外労働と休日労働時間が月80時間を超えた場合、会社がしなければいけないことが労働安全衛生法で決まっているんですね。
①超えた労働者に対し、時間数を通知(毎月一回一定期日に算定)
80時間を超えた労働者の方に、超えましたよ、何時間超えてますよ、といったことを通知しなければいけないというわけです。そのためには毎月一回一定の期日に時間数を算定しなければならないというようになっています。毎月一回一定の期日というのは例えば賃金締切日などに1カ月間の時間数を計算して、90時間になっている方がいたら、あなた超えていますよ、10時間超えていますよ、こういう風に通知しなければならないというわけなんです。
②申出により医師の面接指導を実施(意見聴取、事後措置も)
その労働者の方が申し出た場合に。医師による面接指導を受けさせなければならないということになっています。面接指導を受けた後には、その医師から意見を聴いて場合によっては労働時間の短縮などといった事後措置も必要になってきます。
過重労働時間の計算式
この時の時間外労働時間・休日労働時間の求め方、これが今回のテーマなんですが、次のようになっています。
1カ月の時間外・休日労働時間
= 1カ月の総労働時間数―{(計算期間1ヵ月の総歴日数÷7)×40}
分かりづらいので順番に見ていきましょう
1ヵ月の総労働時間=所定労働時間+時間外労働時間+休日労働時間
1ヵ月の総労働時間は、本来働かなきゃいけない時間数と時間外労働をやった時間数と法定休日労働をした時間数を足して求めます。ただしこの所定労働時間数には有給休暇を取得した日の時間は含めません。ですからこれは実労働時間の合計ですね。
計算期間1ヵ月の総歴日数とは、31日まである月であれば総歴日数は31日、30日まである月であれば総歴日数は30日、これを7で割ります。つまりその月に何週あるかっていうことですよね。そして原則として働かせていいのは週40時間までなので、掛ける40となっています。これは計算すると31日まである月は約177時間、30日まである月は約171時間になります。要はこの時間数というのは週40時間内の時間数っていうことですね。
つまり、その月に実際に働いた実労働時間の合計を出しておいて、そこから週40時間内の時間数を引いて求めた時間外・休日時間数が80時間を超えているのかいないのかを見て判断していくということになります。
特別条項付きの36協定の計算式は?
ここでちょっと注意していただきたいのが、特別条項付きの36協定を締結した場合であっても時間外・休日労働の合計が月100時間未満でなければならない、2~6ヵ月平均が80時間以下でなくてはならない、こういうルールが定められていますよね。これは労働基準法で定められているわけなんですけれども、この時の時間外・労働休日労働の合計の計算式とは違うんですね。36協定でいうところの時間外・休日労働の合計というのは、もうそのままですね、時間外労働時間+休日労働時間で求めます。単純に文字通りこれらを足して求めるんですね。
先ほどの安全衛生法で定められている80時間超えで医師の面接指導が必要となるときの時間外・休日労働時間は単純な計算ではありませんでしたね。
一般的には労働安全衛生法で定められている計算式で求めた時間数の方が、労働基準法で定められている計算式で求めた時間数より少なくなることが多いかと思います。
ちょっとややこしい話だったかもしれないんですけれども、労務管理をされる方には必ず必要な知識となりますのでこの機会にマスターいただけたらと思います。
今回は「健康管理を目的とした過重労働時間の計算式」についてお話をしました。少しでも参考になれば幸いです。
執筆者
志賀 直樹
社会保険労務士法人ジオフィス代表
300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。
保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員