有期雇用契約いている方が契約期間が満了しても契約更新の手続きがされずそのまま働き続けた場合どうなるのでしょうか社会保険労務士がこの相談に回答します。

こんにちは。社会保険労務士の志賀です。今回は相談事例「契約更新をしないで働き続けたらどうなる?」についてお話をします。

このようなご相談をいただきました。「私は3カ月契約のパートタイマーとして入社して働いていましたが、3カ月を過ぎても会社からは契約するともしないとも全く話がありませんでした。そのため引き続き出社して仕事を続けています。会社からはまだ何も言われていません。大丈夫でしょうか?」というご質問なんですけれども、この質問に対する答えとしては、大丈夫です、ということになります。


何故なのかということなんですけれども、民法629条第1項に次のように定められているんですね。

契約期間満了後、労働者が引き続き仕事を続け、会社がそれを知りながら異議を述べなかったときは、従来と同一の条件で雇用が継続されたと推定する。

今回のご質問者の例ですと、契約期間3カ月が過ぎて特に契約書を交わしていないけどそのまま引き続き仕事に行っている。会社は当然それを知っているわけですよね。だけど何も言わない。こういう場合は従来と同一の条件で雇用が継続されたというように推定されると決まっているんですね。ですから特に問題はなくそのまま働き続けていても大丈夫ですよ、次の給料日には働いた分の給料はちゃんと支払われますよ、ということになります。

ただここで一つ問題がありまして、契約期間はどうなるのかということなんですね。雇用が継続されたと推定されるのはいいんだけど、今の身分は有期雇用なのか無期雇用なのか。これについては考え方が分かれているんですね。
労働時間とか賃金は引き続き同じ条件で引き継がれるという風に考えられるんですけれども、契約期間はどうなるのかということはA説とB説の二つの考え方があって、どっちが正しいかははっきりしていないんです。

A説・・・3カ月契約が反復された

B説・・・無期労働契約に転換した

まずA説は、同一の条件で、ということは契約期間だって労働条件の一つだから今まで3カ月契約だったらそれが反復される。同一の条件とはそういうことでしょう、というような考え方です。

B説は、なぜこういう考え方が出てくるかといいますと、民法629条第1項の中に次のような決まりも書いてあるんですね。

この場合、627条の規定により、解約の申入れができる。

民法627条の規定というのは契約解除に関する規定なんですが、簡単に言えば2週間前に退職届を出せばいつでも退職できますよ、というルールです。実はこの民法627条は無期労働契約の場合に適用される規定なんですね。ですから民法627条の規定が適用されるようになるんだったら、契約期間を過ぎて引き続き雇用が継続された時点で無期労働契約に転換されたんだ、という考え方です。

A説もB説もどちらも裁判例がありまして、どっちが正しいのかまだはっきりしていないということになります。
ですからあまりここはA説が正しいかB説が正しいか悩んだりするよりは、すでに不安定な身分になっていますから、会社から何も言ってきてないと言って黙っていないで、会社にざっくばらんに「もう契約期間が過ぎていると思うんですけど私どうなるんですか?」という風に相談してみるのが一番いいと思います。

今回は「契約更新をしないで働き続けたらどうなる?」についてお話をしました。少しでも参考になれば幸いです。

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