パートタイマーが年次有給休暇を取得した場合、賃金はどのように支払えばよいのでしょうか?特に、シフト制など、日によって所定労働時間が異なる場合に迷いが生じます。具体例を用いて社労士が解説します。

こんにちは。社会保険労務士の志賀です。今回は「パートの有休取得時に支払う賃金は?」についてお話をします。

パートタイマーが年次有給休暇を取得した際に賃金の支払いはどのように対応すれば良いのかよくご質問を受けます。まず年次有給休暇を取得した際の賃金の計算方法として3つの方法が認められています。これは就業規則に定めることでどの方法を採用してもいいのですが、順番に見ていきましょう。

①通常の賃金

所定労働時間労働した場合に支払われる賃金を年次有給休暇を取得した際にも支払うという最もシンプルで一般的な方法です。例えば月給制の方で月給30万とした場合に有給を29日取得した場合でも変わらず30万を支払いますが、パートタイマーは基本的には時給制なので難しいと考える人もいるかもしれません。しかしパートタイマーであっても例えば時給1,000円1日6時間で1日の所定労働時間が固定されているケースの場合、単純に1,000円×6で6,000円ということになるので、1日有休を取得したら6,000円を支払えば良いという非常にシンプルで分かりやすい方法になります。

②平均賃金

平均賃金というのは有休取得日から直近3か月間に実際に支払われた賃金をベースに算定されるものがこの平均賃金になります。ということはその都度平均賃金を計算する必要が出てくるという少し計算の手間がかかる方法になります。

③健康保険の標準報酬日額

標準報酬日額というのは標準報酬月額÷30で求められます。この標準報酬月額ですが社会保険料の計算のために便宜上定めたみなしの月給額のことになります。この方法を使うためには労使協定を結ぶ必要があります。過半数労働組合または従業員の過半数代表者と労使協定を締結して初めて採用できる方法になります。ただ労働基準監督署への届出は必要ありません。この方法というのは健康保険の標準報酬月額がないと算定できないので社会保険に加入していない方には適用できないということになります。従って採用されているケースは少ないかと思います。

それでは今回のテーマであるパートタイマーにどのようにして有給取得時の賃金を支払ったら良いのかお話していきますが例を挙げて説明していきます。

【例】時給1,000円・週2日勤務(火・木)・火曜日は4時間、木曜日は8時間・平均賃金は5,000円/日

まず①の方法を使った場合に火曜日に例に挙げたパートタイマーが有休を取得した場合には1,000円×4時間で4,000円が支払われるということになります。木曜日に取得した場合には1,000円×8時間で8,000円となります。すると計算して分かる通り木曜日に有休を取得した方が得するという考え方になるかもしれません。

次に②の方法で賃金を計算する場合、直近3か月の実際に支払われた賃金から割り出した平均賃金が日給5,000円だと仮定します。この場合には火曜日でも木曜日でも5,000円の支払いとなりますが、そうすると火曜日は普通に出勤して働いたら4,000円なので得をする火曜日に有休を取得しようという考えになるかもしれません。

このように所定労働時間が決まっているケースで説明しましたが、シフト制においても同じことが言えるかと思います。もし①の方法を採用したならば所定労働時間が長い日になるべく有休を取ろうとする、平均賃金を採用した場合にはなるべく所定労働時間が短い日に有休を取得しようとするということで全てのパートさんがそのような考えで同じ行動を取ったならば、もしかするとそのシフトを組んでいる会社さんにとっては不都合なことが起きてしまうかもしれません。よってどの方法を採用してもメリット・デメリットがありますので会社の実情に合わせて検討いただき決定していただければと思います。冒頭にもお伝えしましたが、どの方法を採用するかは会社が自由に決めて良いですが、就業規則に規定して常にその方法を使うということが必要になりますのでご注意ください。正社員については①、パートは②と言ったような規定の方法も可能です。

パートタイマーの有給取得時の賃金支払方法については、その方法が得でどの方法が損だというようなことではなくて会社の実態やパートさんの勤務状況に応じて最も合理的な方法を採用していただければと思います。

今回は「パートの有休取得時に支払う賃金は?」についてお話をしました。少しでも参考になれば幸いです。

執筆者
志賀 直樹

社会保険労務士法人ジオフィス代表

300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。

保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員

プロフィールをもっと見る>>

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です