こんにちは。社会保険労務士の志賀です。今回は「半休を取った日の残業代はどうなる?」についてお話をします。
前回の動画で午前半休、午後半休の取り方はいくつかのパターンがあるというお話をしました。今回はその中で午前半休、午後半休を分けた場合を例にとって説明していきます。
午前半休と午後半休で午前午後と分けて言うぐらいですから正午を境に考えるのが非常にシンプルでこの方法は多くの会社が取り入れている方法ですが、午前半休というのは9時~12時まで休むことが可能ということで、その前に説明しなければならないのが今回の前提として所定労働時間は9時~18時、お昼の休憩が12時~13時、1日の実労働時間は8時間と仮定します。時間単価、残業計算のやり方はこれから説明していくわけですが、このケースでは残業代を計算する上での時間単価は1,000円であると仮定します。

そして午前半休を取得した場合、先ほどお話したように9時~12時に半休を取得したということで、3時間半休を取得したことになります。12時~13時までは休憩時間ですから、その場合13時に出社して18時までに働くということで5時間勤務です。このようにきちんと13時に出勤して残業がなく18時に帰れば問題ないわけですが、何かの事情で残業が発生した場合、残業時間によって計算の方法が変わってきます。
例①残業1時間
実労働時間は6時間ですが、この残業計算は時間単価1,000円×1時間で問題ありません。。割増の1.25は不要です。9時から勤務していた場合は18時の時点で8時間勤務しているので18時を過ぎた時点では通常の計算通り1.25の割増が必要です。午前半休を取得している場合は実労働時間が6時間ですから法定労働時間8時間以内に収まっているので割増は不要で良いということになります。この8時間は実労働時間で考えます。これは今回のお話のポイントですが、8時間を超えているか超えていないか、割増が必要か不要かを判断するときの時間というのは、あくまで実労働時間の実際に働いた時間で考えるということになります。半休部分はもちろんお給料は出ます。働いたとみなして3時間半休取得していますが、そこは勤務したとみなして給与計算上は3時間分の賃金は支払われます。ただ実際には働いておらず、実労働しているのはあくまで5時間なので残業代としては割増せずに時間単価分のみ支払われます。
例②残業2時間
このケースでは2時間残業していただくわけですから通常勤務としては5時間、さらに残業時間2時間をプラスして合計7時間となります。7時間ですので例①と同じように思いますが、実は7時間勤務しているので休憩時間が必要となります。実際の労働時間が6時間を超えたら45分以上、8時間を超えたら1時間以上の休憩を与えなければいけません。今回の場合は6時間以上8時間未満ですので最低でも45分の休憩が必要です。休憩を取得せずぶっ通しで働くと違反になります。ただ残業代の計算自体は例①と同じです。5時間+2時間で7時間ということは法定労働時間の8時間の間に収まっていますので1.25の割増は不要です。残業代としては時間単価そのままの1,000円×2時間を払えば問題ありません。
例③残業4時間
4時間残業するということは5時間+4時間で実労働時間9時間となりますので、8時間以上の勤務となります。そうすると1時間以上の休憩が必ず必要となります。18時が定時の場合、まず1時間以上の休憩を取得すること、そこから4時間残業していただく形になります。この場合の残業計算は19時から22時までの3時間については法定労働時間の8時間以内の収まっているということで例①例②と同じように1,000円×3時間分の支払いで割増は不要です。ところが22時~23時のこの1時間については8時間越えになるため1,000円×1.25×1時間の計算となります。もう1つ注意が必要なのが22時を超えているため深夜割増が必要です。深夜割増は22時~次の日の朝5時までの時間に働いていた場合に必要となります。先ほどの残業計算にプラスして1,000円×0.25×1時間分の残業代を支払う必要があります。
前回の動画でもお話ししましたが休憩時間というのは本来一斉付与が原則です。これが一斉ではなくずれた時間に休憩を取得させるのであれば労使協定を結ぶ必要があります。ここも注意してください。

いかがでしたでしょうか。今回は「半休を取った日の残業代はどうなる?」についてお話しました。少しでも参考になれば幸いです。
執筆者

志賀 直樹
社会保険労務士法人ジオフィス代表
300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。
保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員