年次有給休暇を半分に分けて取得する、いわゆる「半休」制度を導入している会社は多くあります。では、午前半休、午後半休は何時から何時までが正しいのでしょうか?法律では規定されているのでしょうか?社労士が具体例を挙げながら解説します。

こんにちは。社労士の志賀です。今回は「午前半休、午後半休って何時から何時まで?」についてお話をします。

まず年次有休休暇は1日単位で付与するのが原則です。ところがこの1日分の有休休暇を半分に分けて半日分ずつ付与するといういわゆる半休制度、これを導入している会社っていうのは結構たくさんあります。この半休制度ですが、これは法律で定められた制度ではありません。今回は説明しませんけれども時間単位年休、時間単位で付与する時間単位年休は法律で定められていますが、この半日単位で付与する半休制度これは法律で定められた制度ではないです。これは従業員が半日単位で有休を使うことを希望して、そして会社の方でそれを認めたならば半日単位で付与しても良いですよということになっているだけであって法律で何か制度が決められているわけではないと。したがって半休制度がない会社もあるわけですね。従業員がいくら半休を取りたいと言ってきても半休を与えることは会社の義務ではないと。会社にそういう制度を導入している場合、就業規則で定めて導入している場合には半休制度やってもいいよということです。ということは、これは法律で定められている制度ではないので午前半休、午後半休、何時から何時までとかでこういったルールが明確じゃありません。明確に定まってないと。ですからこれは会社ごとに決めることになります。そのために午前半休、午後半休、ちょっと分かりづらいのです。何時から何時までが午前半休で何時から何時までが午後半休なのか、ここがちょっと分かりづらいと思ってらっしゃる方結構たくさんいると思いますので今回は具体的な例を挙げて説明をしていきます。

午前半休、午後半休を考えるうえで、午前半休っていうのは何時から何時まで休むことが午前半休なのか、午後半休っていうのは何時から何時まで休むことが午後半休なのか考えるとちょっとややこしい場合があって実は午前半休っていうのは裏返せば午後働くってことですよね。午後勤務ってことですよね。午後半休っていうのは午前中に働く、午後半休っていうのは裏返せば午前勤務なのだと。ですから、午後勤務・午前勤務、午後勤務は何時から何時までなのかと午前半休を取った場合には勤務は何時から何時までやればいいのか、午後半休取った場合は何時から何時まで勤務すればいいのか、こっちで考えた方がはるかに分かりやすいですね。ですから勤務時間はどうなるのかっていう観点も含めて今回のお話を聞いていただければと思います。ではいきましょう。

ここに例を書いておきました。前提としてはこういう会社があったとします。始業時刻は9時、終業時刻は18時で休憩が12時から13時の1時間、実働8時間のこういう会社を例にとって説明をしていきます。まあ典型的な例だと思います。その半休の与え方によって色々でいくつかのパターンがあるのですが

大きく分けてこの3パターンをおさえておけば大丈夫だと思います。この3パターンのうちのどれかで考えると。

①文字通り、正午を境に分けた場合

つまり午前という言葉、午後という言葉、午前中に休むのが午前半休であると午後になったら休むのが午後半休であると、その境目は正午ですよね。お昼の12時。そこが境目なのだという考え方。この考え方をしている会社が結構多いのではないかと思いますけれども、ちょっと見ていきますと午前半休ですね、9時~18時が本来の所定労働時間ですね。午前半休っていうのは午前中に有休を取る、半休を取るということなので12時が午前と午後の境目ですから、9時から12時3時間ですね。ここの3時間有休を取る、これが午前休、午前半休だと。①と②のケースは休憩時間を意識しているパターンですね。休憩時間っていうのは12時~13時なのだから午前中に取るのが午前半休、午前休というのは9時から12時に取得するものです。ただ12時~13時は休憩時間だから、この場合は13時に出勤してくださいと。この場合の勤務時間っていうのは13時~18時になります。図の⑤っていうのは5時間ですね。この場合は5時間勤務になります。午前半休取るとこのケースでは5時間勤務になると。それに対して午後半休ですね、午後半休というのが午後になったら有休を取るのが午後半休だと。この文字通り正午を境に考える。ですから12時以降ここがお休みになると。12時以降が半休になると。12時~13時っていうのは元々休憩時間でこれ労働しない時間だから、13時~18時5時間、就労義務がある13時~18時の本来働かなきゃいけない時間、ここに対して有休の半分を当て込んで取得していくと。これが午後半休であると。ということは勤務は9時~12時までしてくださいと、こういうことになりますよね。12時から13時は本来休憩時間だから、ここの本来働かなきゃいけない時間帯9時~12時、午前中3時間勤務をしてくださいと、こういうことになります。これでやっている会社が結構多いかと思います。午前半休、午後半休と午前午後という言葉、それを文字通り受け取って正午を境に考えていく。ただこの考え方は見て分かると思うのですが、午前半休と午後半休取った方不公平になりますよね。その半休を取るということは有休の残日数が0.5日少なくなる、0.5日使うということですね。この午前半休では3時間しか有休を取ってないのに残日数から0.5差っ引かれる。それに対して午後半休は5時間使っていますよね。本来5時間働かなきゃいけないところを有休を使って不就労、お休みしていますから。5時間使って0.5日分。今回のケースでは就業時間が実働8時間の例で考えていますので、半分というと4時間のはずですよね。ところが午前は3時間で0.5、半分とみなされる。午後は5時間使って半分とみなされる。逆にちょっと裏返して考えてみてください。勤務時間で見てください。午前半休取った方は5時間働いていますよね、午後に。それに対して午後半休取った方というのは勤務3時間しかしてないと。これで同じように0.5日使ったという風に扱われるということですよね、この①のパターンだと。そうするとこれ午前半休と午後半休がちょっと不公平になるという、こういうデメリットというか特徴があります。ですからこれを導入している会社においては午後半休を取る方が多いのでないでしょうか。明らかに午後半休取った方が得ですよね。これが①の考え方です。

②勤務時間をどちらも4時間にした場合(休憩あり)

これは先ほど勤務時間が午前半休では5時間、午後半休では3時間と不公平になることを公平にしようというやり方です。1日の所定労働時間は8時間ですから午前に半休を取った方も午後に半休を取った方も4時間、所定労働時間の8時間の半分の4時間を働いてもらいましょう、後は休んでいいですよと、こういう制度設計にしましょう。これが②のパターンですね。午前半休に関してはとにかく4時間働いてもらいましょう、と。だから勤務の前半で休んでもらって終業時刻の18時までの4時間勤務してもらいましょう。ということは18時が終業時刻ですから14時、お昼後の14時ですね。14時に出勤してもらえれば3,4,5,6と4時間勤務していただくことになると。これでちょうど本来の所定労働時間の半分である4時間を勤務していただくこと。だから後は全部休んでいただいて結構ということです。ですから14時まで休んでいただく。このケースでは休憩時間を意識して書いています。12時~13時は本来休憩時間で元々労働義務がない時間で9時~12時、13時~14時に関しては休んでいいですよ、と。ここを有休当て込んで休んでくださいということになります。それに対して午後半休は午後は休んでいいということになります。始業時刻から前半働いてくださいということで、予定通り9時に出社していただいて勤務開始していただく。要はこの午後半休の方は始業時刻から4時間働いてください、4時間働けばあとは帰って問題ないという制度設計になりますので、本来の始業時刻の9時に出社して働いていただいて、そして12時になり休憩時間になったので、ここは休憩していただいて結構です。休憩して13時になったら本来の労働時間が始まりますので1時間だけ働いてください、14時までとなります。そうすると午前中で働いた3時間と午後の1時間を合わせて合計4時間になります。あとは帰ってよいということになります。14時~18時は午後半休となり、午前半休の場合と比べても時間的には一緒です。

③勤務時間をどちらも4時間にした場合(休憩なし)

②と似たようなケースです。同じように勤務時間をどちらも4時間にした場合で休憩を考えないケースです。半休を取った方には休憩がいらないという考え方のもと休憩なしで考えていくケースです。午前半休というのは午前中休んでいただくのですが、終業時刻までの4時間は働いてくださいということで14時に出社して18時まで働いてくださいとすると勤務が4時間になります。14時までは有休で休みでいいですよとなり、要するに4時間働くこの方には休憩時間はないということになります。次に午後半休ですね。午後半休は午後は帰って良いとするけど始業時間から4時間は働いてくださいということで、本来の始業時刻である9時に出社していただいて4時間働いて、休憩なしで13時まで働いていただくケースで13時になったら帰ってもよいという形です。もしかしたらこっちの方が喜ばれるかもしれないですね。②のパターンだと休憩を取って帰るのは14時になるということで働く時間という面では同じですが、③のパターンでは9時~13時まで4時間働いてあとは13時になったら帰っても良いということで、この後は午後半休の扱いになるということになります。②のパターンでは休憩が入ってくるのでややこしくなるのですね。先ほど言ったように半休が何時から何時までという考えではなく、午前半休は何時から何時まで働くのか、午後半休は何時から何時まで働けばいいのか、こちらを考えた方が分かりやすいということになります。

ただし③のケースを行う場合、注意していただきたいのは勤務が6時間を超える場合は休憩が必要になります。休憩なしで考えたパターンとして紹介しましたが、休憩というのは勤務が6時間超えた場合は45分以上、8時間を超えた場合には60分以上の休憩を労働時間の途中で与えなければいけないという法律で決まっていますから、これは勤務が4時間で終われば休憩なしで問題ありません。勤務時間が6時間を超えるというのは実労働時間という意味ですから、実労働時間が6時間超えた場合は休憩必要だということで実労働時間が4時間の方は休憩なくても良いのです。ですがきちんと就業規則に記載してください。この半日単位の年次有休の半日単位の付与、そういった規程を条文に設けるのですが、そこに半休の場合は休憩がないということをしっかり書いてください。それを書かないと休憩の条文のところに休憩12時から13時の休憩を与えるとだけの記載だと、勘違いする人が出てくる可能性があります。ただし、午後半休で午前中に勤務するケースは13時になったら帰ってもいいケースなので4時間以上になることは少なく問題ないと思います。ところが午前半休で14時に出勤し18時まで4時間働くというパターンの時、これはもしかすると何か突発的なことが起きて残業が発生する可能性があると思います。午前中は用事のために半休を取得し14時に出社して後は特に用事はなく仕事をする場合には18時以降に何か突発的な業務がありそこから残業に入ることはあり得ることだと思います。当然その場合は残業代を払わなければいけないのですが、残業代に関しては次回の動画でお話ししたいと思います。そしてこの残業が1時間程度の残業であればいいのですが、勤務時間が6時間を超えるような2時間以上の残業の残業が発生した場合に休憩を与えないと違法になってしまいます。ということは残業が発生しそうなことが分かった段階で休憩を付与しなければいけないということになります。また休憩というものは一斉に与えなければいけないというルールがあり、これも法律で定められています。この会社が12時から13時の間が休憩時間というのであれば全員に12時から13時に休憩を与えなければならないという原則です。ですから午後出社してから残業が発生しそうな場合に夕方休憩を取得するとなると当然先ほど言った皆さんとのお昼の休憩を取った時間とずれることになります。実はこれが休憩の一斉付与の原則に抵触することになるため、労使協定を結んでおく必要があります。午前半休で14時から出社する場合に夕方の勤務が4時間を超え6時間以上になる可能性はあり得るので休憩を取得する必要があります。しかしお昼には取得できないので、この休憩の一斉付与の適用除外の労使協定を締結する必要があります。ただし労使協定の必要のない業種もあり、特定業種と言いますが、運輸交通業、商業、金融広告業等その他いくつかありますが、それは解説した別動画がありますのでそちらをご確認ください。よって特定業種ではない場合は休憩の一斉付与の適用除外の労使協定を結ぶ必要があります。

はい、いかがでしたでしょうか。半日有休とは法律で定められた制度ではない会社ごとに制度設計して良い、ということは紹介した①~③のパターンどれをやるにしても就業規則でしっかり記載しておく必要がありますので、分かりやすいのは勤務時間の方を記載しておくのが分かりやすいかと思います。そして③のパターンをやる場合には特にその旨を就業規則に書き、労使協定もしっかり締結する必要がありますので注意してください。

というわけで、回は「午前半休、午後半休って何時から何時まで?」についてお話をしました。少しでも参考になれば幸いです。

執筆者
志賀 直樹

社会保険労務士法人ジオフィス代表

300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。

保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員

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