3ヶ月契約で入社した人に辞めてもらいたいならば、契約期間の終了待って打ち切りにするのが基本ですでは、なぜそのような方にも試用期間を設定した方が良いのか社労士が分かり易く解説します。

こんにちは。社会保険労務士の志賀です。今回は「3カ月契約のパートタイマーにも試用期間が必要な理由」についてお話をします。

まず労働基準法や労働契約法で定められた解雇のルールについて説明していきます。

解雇する場合は30日以上前の解雇予告か平均賃金30日分以上の解雇予告手当が必要(手続きのルール)

30日以上前に「解雇しますよ」と予告をするか、または平均賃金30日以上分の解雇予告手当を払うのですが、これは合わせ技でもOKです。例えば30日以上前に予告することができなくて20日前に予告した、ということは不足している10日分を解雇予告手当で支払うということも可能なんですね。手続きのルールとしてありますが、手続き上必ずこういうことをしてくださいねという決まりであって、解雇予告や解雇予告手当の支払いをすれば必ず解雇が有効になる、自由に解雇ができる、ということではありませんので気を付けてください。

客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性がないと解雇は無効(解雇権の濫用)

客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性、非常に分かりづらいですが、これは一般社会の常識に照らして誰が見てもその解雇はやむを得ないだろうという風に考えられる状況でないと、解雇権の濫用で無効であるということになってしまうということなんですね。ということは、かなりハードルが高いんですね。ですからこういう点がもし争いになった場合には会社が負ける可能性というのは非常に高いです。ですから私は常々解雇というのはどのような解雇であっても不当解雇だと言われるリスクを抱えていますのでなるべく避けてください、とご案内しているわけなんです。先ほどの手続きのルール、30日以上前の解雇予告や解雇予告手当の支払いをしていたとしても、こういった内容的な部分が問われれば、こういったことを満たしていないとその解雇は無効だということになってしまうというわけなんです。

有期労働契約の場合は、やむを得ない理由(非常事態)がないと契約期間中に解雇できない(原則できない)

実質できないという風に考えていただいていいかと思います。有期労働契約というのは3カ月契約とか6カ月契約とか1年契約など期間の定めのある労働契約ですよね。そういった期間の定めのある有期契約労働者を契約期間中に解雇するということは原則としてできない、それが認められるのはやむを得ない理由がある場合だけですよ、こういう決まりなんですね。やむを得ない理由って一体何なのか。非常事態、とありますがよほどの特別な状況・異常な状況こういったケースでないとやむを得ない理由とは認められないということになります。例えば懲戒解雇レベルのとんでもなく悪いことを従業員さんがした場合とか、あるいは会社が存続できなくなるような状況になってしまったとか、よほどの特別な非常事態が発生しない限り、有期労働契約というのは、この期間は雇用しますと期間を約束しているわけですから、その途中での打ち切りというのは原則できないということになります。

試用期間中かつ入社14日以内であれば解雇予告もしくは解雇予告手当の支払いは不要(手続きのルール)

先ほど一番目のルールが免除されるというわけなんです。これもあくまで手続き上の話ですから、試用期間中かつ入社14日以内であれば自由に解雇できるんでしょうという話ではありませんからそこは気を付けてください。「試用期間中」については、正社員なら正社員に適用される就業規則、パートタイマーであればパートタイマー就業規則、それぞれ適用される就業規則の中に試用期間はこうである、と定めてあること。または雇用契約書の中にも試用期間について3カ月ですよとか1カ月ですよとかそういう風に記載がないとだめだ、ということになります。「入社14日以内」というのは土日も含めて暦日で14日以内ということになります。

試用期間の定めがなければ解雇予告手当の支払いが必要に・・・

有期契約労働者の場合は先ほどご説明したように原則として契約期間中は解雇できないので、試用期間中あるいは試用期間満了をもって辞めていただくというのはできないわけなんですけれども、やむを得ない理由が出てきたときにどうなのかという話なんですね。やむを得ない理由があれば例外的に有期労働契約の場合でも解雇ができる、つまり試用期間中なりで辞めていただくことは可能になるんですけれども、その時に試用期間がもし定められていなければ、解雇予告手当の支払いが必要になってくる、というわけなんです。3カ月契約のパートタイマーの方が入社して14日以内にとんでもない悪いことをした場合、例えば上司や同僚に暴言をはいたり、周りの社員にセクハラをしたりするようなケースでは、いくら解雇はリスクがあるからできるだけ避けた方がいいといってもそれを放置していたら職場がめちゃくちゃになってしまうというような場合には解雇せざるを得ない状況もあるかと思います。こういった方を14日以内に解雇しようとしたときに試用期間の定めがなければ解雇予告手当の支払いが必要になってくるわけです。それってちょっと払いたくないですよね。
ですから私は3カ月契約のパートタイマーであったとしても最低でも1カ月でもいいから試用期間は設定してください、とご案内をしているわけなんです。

契約期間の有無に関わらず入社早々とんでもない不良行為を働く社員がいたとすれば、そもそもなんでそんな人を入社させたんですか、採用選考はちゃんと行ったんですか?という話になってしまいますよね。人手不足の昨今、数少ない応募者に飛びつきたくなる気持ちはよく分かりますし面接だけではなかなか難しいのは事実ですけれどもやはり最低限の見極めは必要となりますのでよろしくお願いいたします。
今回は「3カ月契約のパートタイマーにも試用期間が必要な理由」についてお話をしました。これからの労務管理に少しでも参考になれば幸いです。

執筆者
志賀 直樹

社会保険労務士法人ジオフィス代表

300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。

保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員

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