もうすぐ退職することが決まっている社員に対し、規定通りの日数の年次有給休暇を付与する必要はあるのでしょうか?社労士が明快に解説します。

社会保険労務士の志賀です。
今回は、時々質問される「もうすぐ退職する社員にも、有給付与は必要か」についてお話しします。

もうすぐ退職することが決まっている社員にも既定通りの日数の年次有給休暇を付与しなければいけないのでしょうか?

退職が決まっている社員にも、規定通りの日数の有給休暇を付与しなければならない

こういう例で考えていきましょう

(例)・有給付与日:4月1日
   ・付与日数:20日(週5日勤務、勤続6年以上、出勤率8割以上)
   ・ただし、「4/30付で退職する」旨の退職届が出ている

Q 有給付与の1ヶ月後に退職することが決まっているので、有給を付与しない、または1/12の日数の付与で済ますことはできる?
A できない。

有給の付与日数というのは、週何日勤務か、勤続何年以上か、出勤率はどうか、を踏まえた上で自動的に決定されてしまいます。
ですので、有給付与日以降いつ退職するかは、有給の付与日数には全く関係がないのです。

ですので、この方には、20日の付与をしなければならない。「有給を付与しない」というのはできないということになります。

有給付与日から2ヶ月後に辞める方には付与日数の1/6、1ヶ月後に辞める方には付与日数の1/12の有給休暇を与えれば良いのではないか、と考える方も時々いらっしゃるようです。

確かに、有給休暇というのは年に1回付与されるものですので、付与日数は1年分の日数のように見えるのですが、実はそうではありません。

有給付与後の在籍があと何ヶ月だから〜というような月割計算や按分計算はできません。

釈然としない、そんな気持ちもよくわかりますが、現在の有給休暇のシステムはこういったルールとなっています。

次にこういう場合はどうでしょうか?

前年度の繰越ぶんの有給があり、付与分と合わせると退職日までに消化しきれない…

Q 「4/30までに有給残日数を消化できないので、全て消化できるよう、退職日をずらして欲しい」との申し出があったが応じなければならない?
A 応じる必要なし。

有給を取得するというのは、所定労働日にしかできません。労働日でない休日に有給を取得することはできませんよね?それと同じように、退職日以降は労働日ではありませんので、退職日以降に有給休暇を取得することはできません。

そして、この方は「4/30付で退職する」旨の退職届を出しているので、会社が受理した時点で退職日は「確定」しています。ですので、それまでの範囲内で消化する、ということになります。

消化できなかった分の有給休暇の日数分を「買い取って欲しい」と言われた場合も、応じる必要はありません。

有給の買取は義務ではありません。

年次有給休暇のルールを理解しよう!

年次有給休暇のルールに関しては、「腑に落ちない」「もやもやする」といった経営者の方もいらっしゃるかと思います。

ですが現在はこれがルールとなっていますので、これを前提として色々な計画を立てていただくのが良いかと思います。今回は、「もうすぐ退職する社員にも、有給付与は必要か」についてお話しいたしました。これからの労務管理に少しでも参考になれば幸いです。

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他にも、特定社会保険労務士の志賀直樹が、労務管理の実務に役立つ基本的な知識や法改正の情報などを、Youtube「社労士の志賀チャンネル」でわかりやすく解説しております!ぜひご覧ください。

執筆者
志賀 直樹

社会保険労務士法人ジオフィス代表

300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。

保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員

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