遅刻を3回したら欠勤1日とみなして、1日分の給与を減額することはできるのでしょうか?こういう取り扱いを実際に行っている会社もときどき見受けられますが、果たして…。社労士が丁寧に解説します。

こんにちは。社会保険労務士の志賀です。今回は「遅刻3回で欠勤1日として給与を減額できるか?」についてお話をします。

今回は実際の相談事例となります。これは結論から言いますとできません。それはなぜなのか、そしてどのような対応であれば可能なのか順番に見ていきましょう。

①不就労控除

遅刻をした場合に不就労控除をすることは可能です。不就労控除というのは欠勤控除であるとか、遅刻早退控除のことを言いますが、ノーワークノーペイの原則により実際に遅刻した時間分の減額をすることは可能です。ノーワークノーペイの原則というのは働かなかった部分については給料を支払う必要がないという原則のことです。ただこの不就労控除を行うにあたっては事前に就業規則に計算式を明示する必要があります。

②減給の制裁(懲戒処分)

次に減給の制裁ですが、これは懲戒処分の一種です。この制裁を行うことはどうなのかということですが、これは就業規則に規定があれば可能です。ただこの懲戒処分の一種である減給の制裁を行うためには金額の上限があり、1事案につき平均賃金の半額まで・総額は月給の10%までという制約があります。この1事案というのは懲戒処分の対象となる悪いことということになります。このケースで言うと、遅刻3回をしたことで処分しようという内容でこれが1事案ということになります。そうすると平均賃金の半額が限度なので例えば平均賃金が1万円だとすれば5,000円が限度というわけです。遅刻3回で1日分の給与を減額してしまうと、これを超えてしまうということになるので減給の制裁はできないということになります。総額は月給の10%までというのは複数の事案があった場合です。

では遅刻1回につき、減給の制裁をしたらどうかと考える人もいるかもしれません。しかしその場合には懲戒権の濫用という問題が絡んできます。確かに会社には就業規則に定めてあれば懲戒処分を行う権利はありますが、バランスが重要となります。やった悪いことに対する処分の重さが大きいと懲戒権の濫用で無効となる可能性もあります。例えば遅刻を1回する都度いきなり減給の制裁を行うことは少し重すぎるのではないかということになります。

この懲戒処分ですが、いきなり減給の制裁ということではなくて軽い懲戒処分から順を追って行う必要があります。よって遅刻が多い場合にはまず口頭で注意指導をすることから始めてください。それでも改まらなければ、けん責処分始末書を提出させて将来を戒めるというような軽い処分を行います。それでも改まらなければ、初めてこの減給の制裁をするといったステップを踏むことが必要です。

そして減給の制裁は就業規則に規定があれば可能と言いましたが、懲戒処分の対象となるものに対しても記載しなければいけません。よくある例としては、正当な理由なくしばしば遅刻欠勤を繰り返したときと記載があります。そうするとこの正当な理由とは何なのかというのも問題になります。電車の遅延などは仕方がないとなるかもしれませんが、寝坊や忘れ物を取りに戻った等は正当な理由ではないと判断されるかと思います。子どもが病気になって病院に連れて行ったことで遅刻した場合には、正当な理由として認めるのかどうか予め社内で整理しておく必要があります。

懲戒処分をする際には単に遅刻をしたから機械的に数えて3回目で懲戒処分ということではなくて、遅刻の理由であったり事前の連絡があったのかどうかということも大事です。遅刻によっても2~3分なのか2~3時間なのかでは違うかと思います。

③精皆勤手当の不支給

〈例〉無欠勤 …5,000円 ※ただし遅刻3回で欠勤1日とみなす

上記のような例文が就業規則にあったとします。これは遅刻欠勤早退なく勤務した場合には月額5,000円を皆勤手当として支給するといった内容です。ただし遅刻3回したら欠勤1日とみなし、皆勤手当は0円ということになります。このような手当の支給要件というのは会社が自由に設定できますので問題ありません。もしかしたら精皆勤手当てにつきこういう扱いができるということと、遅刻3回で欠勤1日として1日分の給与を減額していいということ混同している方がいるかもしれませんが、これは別問題です。精皆勤手当に関してはこのような取扱いは可能です。

④賞与のマイナス査定

賞与額の決定は会社に裁量認められていますのでマイナス査定をしても問題ではありません。しかし極端な減額だと認められない場合がありますので注意してください。

⑤メンタル不調の可能性

相談として今回の内容をいただいたわけですが、給与を減額できるのか考えだす理由として社員さんの遅刻が多くて改まらないので何らかの制裁的なことをして遅刻を無くしたいということだと思います。しかしその遅刻がどうして改まらないのかということが重要です。注意指導しても改まらない場合にはもしかしたらメンタル不調の可能性も検討する必要があるかもしれません。例えば休み明けに欠勤や遅刻が目立つようになってきた場合にはメンタル不調のサインかもしれません。厳しく注意指導叱責をするだけではなくて、面談等話を聞いてあげるということも必要かと思います。状況によっては産業医やカウンセラー支援を受けることも検討する必要があるかもしれません。

今回の相談事例のようなことを考える背景にはもちろん1日分の給与を浮かせたいということだけではなくて、遅刻をせずに出社していただきたいことが1番の目的です。遅刻をすることが何故いけないことなのか時間を守ることは大切なことということを社員さんにしっかりと教育していただくということが必要かもしれません。今さらそんなことが必要なのかと思われるかもしれませんが、人を雇って働いてもらうためには大変なことですが大変重要なお話になります。

今回は「遅刻3回で欠勤1日として給与を減額できるか?」についてお話をしました。少しでも参考になれば幸いです。

執筆者
志賀 直樹

社会保険労務士法人ジオフィス代表

300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。

保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員

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