仕事中のケガなどで従業員が休業したときには、会社は労働者死傷病報告を労働基準監督署に届け出なければなりません。これを怠ると「労災隠し」になってしまいます。労災保険を使わなかったときはどうするか?など、社労士が詳しく解説します。

こんにちは。社会保険労務士の志賀です。今回は「労働者死傷病報告を提出しないと労災隠しで書類送検に⁈」についてお話をします。

今回はタイトルにもある労働者死傷病報告について詳しくご説明していきます。いきなり余談なのですが、私傷病による休業が4日以上になった場合に一定の要件を満たせば健康保険から傷病手当金が受けられるというルールがあるのをご存知の方もいるかもしれません。こちらも私傷病と言いますが、漢字が違います。傷病手当金はプライベートでの怪我病気という意味で私傷病のシは私という漢字になります。ところが、死傷病報告のシは死亡や怪我や病気という意味なので死という漢字を使います。漢字と意味が違いますので混同しないように気をつけてください。

では労働者死傷病報告はどういうものなのか見ていきましょう。以下のようなルールが定められています。

もしこの労働者死傷病報告を提出しなかったり虚偽の報告をすると「労災隠し」と言って犯罪になってしまいます。これは労働安全衛生法違反として書類送検され50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。この場合、両罰規定といってその行為を行った社長や役員も罰を受け、法人として会社そのものも罰を受けるということが定められています。そして罰金刑が確定すると前科がついてしまいますので注意していただければと思います。

先ほど説明した死傷病報告の提出に関するルールや内容を細かく見ていきます。

まずは仕事中または事業場内での負傷等という部分ですが、仕事中の負傷はまさに業務災害です。労災保険の適用対象になるような怪我病気ということになります。労働者死傷病報告は業務災害での休業のみ対象となると思っている方がとても多いですが、仕事中ではなくても事業場内で起きた怪我あれば、その怪我によって休業した場合にこの死傷病報告の報告対象となるということになります。明らかに業務災害ではない、仕事と全く関係ない場合であっても事業場内で起きたものであれば死亡や休業になった場合には報告書の提出義務があるというわけです。この事業場内とは事業場の敷地内はもちろん、その事業場に付属する建築物(例えば寄宿舎など)で起きた怪我も対象となります。

では通勤災害はどうなるのか疑問に持つ方もいるかもしれません。通勤災害は仕事中でもなければ、事業場内でもない通勤中の怪我になるため、通勤中の怪我等による休業に関しては報告の提出義務はないということになります。

負傷等ということで、負傷以外に何があるのかということですが、例えば窒息・急性中毒といったものが等に含まれます。そして対象者は労働者となっていますので、社長や専任役員のような方は労働者ではないので、怪我や死亡をした場合でも報告の対象とはなりません。ただし兼務役員の場合には労働者性があるので報告の対象となります。

次に死亡または休業とあります。死亡は分かりやすいと思いますが、休業についてあったかなかったかの判断に迷うときがあります。例えば朝から仕事へ行き途中まで普通に働いていたけれども勤務時間中に途中で怪我をしてすぐ病院に行った後に自宅へ帰って一部休業していたケースですが、それを休業1日とカウントするのかどうかということです。この場合労働者死傷病報告においては休業は0日という考え方になります。怪我をした翌日からカウントして休業が何日あったのかということなので、勤務時間中に怪我をして早退して病院に行きそのまま自宅に帰ったとしても、翌日通常勤務をしているのであれば休業はなかったと考えますので報告義務はありません。

さらに事業主はという部分がありますが、事業主というのは怪我をして休んでいる労働者の方(被災労働者)を直接雇用している事業主ということになります。ここで少し注意が必要なのは建設業で下請けで建設現場に入っている場合です。下請けとして建設現場に入っている労働者の方が怪我をして休業した場合、死傷病報告は誰が提出するのかということなのですが、被災労働者を直接雇用している事業主となるので怪我をしたのが下請けの建設現場であってもその方を雇用している会社が報告の義務があります。知識がある方にとっては労災保険の取扱いとは違うためややこしいかと思いますのでご注意ください。これから解説をする中で労災保険とは違うと思う部分がいくつかあるかもしれませんが、理由は労災保険と根拠法が違います。この労働者死傷病報告は労働安全衛生法に基づく制度なので労働保険の取扱いとは一部違う部分がありますので、その点は注意していただければと思います。

この報告書に関しては労災の手続きと一緒に進めることが多いのであたかも労災の手続きと一体的なものであると捉えがちですが、これは全く別物で提出先も違います。労災の書類は労働基準監督署の労災課というところに提出しますが、死傷病報告は安全衛生課に提出する流れとなります。被災労働者を直接雇用する事業主が提出の義務を負うということですが、実は例外があります。派遣労働者のケースです。派遣労働者が怪我をして休業した場合、派遣先と派遣元どちらがこの報告書を出さなければいけないかということですが、答えは両方提出しなければなりません。派遣先も派遣元も両方この死傷病報告を提出することになります。

次に遅滞なく所轄労働基準監督署に提出とありますが、遅滞なくとはなるべく早くという意味です。遅くとも1か月以内には提出しないとまずいのではないかと思います。提出先について所轄とは何なのかというところですが、被災労働者が所属する事業場を管轄する労働基準監督署のことです。注意点がいくつかあって、出先や出張先の怪我の場合でもあくまで労働者が所属している事業場の所轄の労働基準監督署に提出することになります。出張先の場所の所轄ではないことに注意してください。また継続事業の一括認可を受けた被一括事業場でも、こちらも労働者が所属している事業場を管轄している労働基準監督署に提出です。あくまで労働保険の申告を一括しているだけの話であって報告書とは関係ありません。建設業においては建設現場が事業場とみなしますので当然のことながら、その現場で怪我起きた場合には建設現場を管轄する労働基準監督署に届出を行うこととしています。ここで疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、有期事業の一括が適用されている建設現場ではどうなるのかということです。有期事業の一括とは労働保険の申告上、一定の要件を満たしたいくつかの工事を一つにまとめて一括して申告する制度のことですが、この場合であっても取りまとめられた一つ一つの工事現場で起きた怪我に関してはその工事を管轄する労働基準監督署に提出をするということになります。

この場合でも例外は派遣となります。先ほど説明したように派遣労働者が被災労働者となった場合には派遣先・派遣元両方で報告書を提出することになります。派遣労働者を雇用している事業場というのは派遣元ですから、派遣元は原則通り被災労働者が所属する事業場を管轄する労働基準監督署へ提出すれば問題ありません。一方派遣先は派遣労働者が所属している事業場ということではないですが、提出は必要となりますのでその部分が例外的な取扱いとされています。ちなみにこの派遣労働者が被災した場合の死傷病報告の提出の流れですが、派遣先は事故の様子など詳細が分かると思うので提出が簡単かと思います。しかし派遣元は情報がないため報告書をどのように作れば良いのか疑問に思うかもしれません。流れとしては派遣先が先に労働者死傷病報告を作成して派遣先の管轄の労働基準監督署に提出し、その後に写しを派遣元に送らなければなりません。そういう決まりがあります。派遣元はそれが来たらそれを元に同じように報告書を作成して今度は派遣元を管轄する労働基準監督署に提出するということになります。

そして労働者使用報告書は書式が2種類あります。休業の程度によってどちらを使うか決まっています。

●死亡または休業4日以上

様式第24号(遅滞なく提出)

●休業4日未満

様式第24号(四半期ごとにまとめて提出)

1月~3月分 4月末までに提出

4月~6月分 7月末までに提出

7月~9月分 10月末までに提出

10月~12月分 1月末までに提出

この書式については概要欄にリンクを貼っておきますので後で確認してみてください。

先ほど出てきた様式第23号ですが、死亡または休業4日以上ということでピンと来た方もいるかもしれません。業務災害で休業4日以上になった場合に労災保険から休業補償給付というものが受けられます。その際に様式第8号というものを提出しますが、実はこの様式第8号の中に労働者死傷病報告の提出年月日の記入欄があります。必ず記入してくださいとそこに書いているわけです。ですからこの様式第23号を提出していなければ書けない内容となっているので休業補償給付の申請ができないということになります。労災保険を使わず休業補償給付の申請をしない場合でも様式第23号は必ず提出する必要があります。

最後にこの休業4日以上のカウントの仕方について説明します。労働者死傷病報告の休日日数のカウントというのは先ほど言ったように事故があった翌日からカウントとなります。よって勤務時間中に途中まで勤務をして怪我をしてすぐに病院に行ってそのまま自宅に帰っていても、途中まで勤務しているので一部休業したことになり、この日はカウントしません。翌日が休業カウント1日目となり、そこから3日間のお休みであれば様式第24号の提出、4日を超える場合には様式第23号の提出が必要となります。

労災の休業日数のカウントの仕方というのは実は少し違い、所定労働時間内に怪我をしてそこからすぐ病院に行きそのまま家に帰ったとしたら一部休業だとしても、その時点で休業1日目となります。しかし所定労働時間外残業中に怪我をした場合にはその日は休業にはカウントせず、翌日を起算日としてそこから1日目となります。このカウント方法が労働者死傷病報告と労災保険では考え方が異なりますので注意していただければと思います。

労災保険を使わなかった場合に直ちに犯罪というわけではありません。しかし今回説明した労働者死傷病報告に関しては提出しなかった場合には冒頭でもお伝えしたように労災隠しという犯罪になってしまいます。今回お話した内容を理解していただいて必ず提出するようにしていただければと思います。

今回は「労働者死傷病報告を提出しないと労災隠しで書類送検に⁈」についてお話をしました。少しでも参考になれば幸いです。

執筆者
志賀 直樹

社会保険労務士法人ジオフィス代表

300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。

保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員

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