2024年施行される労働関係の法改正中で特に重要と思われるものをピックアップして概要を説明します。自社に関係ありそうなものがありましたら別途詳細を確認してください。

こんにちは。社会保険労務士の志賀です。今回は「2024年に施行される労働関係の主な法改正」についてお話をします。

今回は特に重要と思われる5つをピックアップしてその概要を俯瞰的にご紹介していきます。それぞれの詳しい内容については既に別の動画でアップしているものもありますのでそちらの方も併せて見ていただければと思います。
4月から施行されるものが4つ、10月から施行されるものが1つ、合わせて5つご紹介していきます。それでは順番に見ていきましょう。

①労働契約時に書面で明示〈4月施行〉

労働契約を締結するときには、重要な労働条件については書面で明示しなければなりません。明示しなければならない項目は法令で決まっているんですけれども、その項目が新たに追加されるというわけなんです。

1.就業場所・業務の変更の範囲

今までも明示事項として定められていたんですけれども、今までは入社直後のものだけだったんですね。これが将来的にどこまで変更の可能性があるのかも含めて明示しなければならなくなったわけです。

2・3・4に関しては有期労働契約つまり6ヵ月とか1年とか期間の定めのある雇用契約で働く場合に必要になる項目になります。

2.更新上限の有無と内容

通算の契約期間は何年までとか更新回数は何回までとかいう上限が有るのか無いのか、有るのであればそれが何年なのかあるいは何回なのかを明示するということになります。

3.無期転換申込機会

有期労働契約5年を超えて更新する労働者が希望した場合には、無期労働契約つまり期間の定めのない労働契約に転換することができるというルールなんですが、契約期間中にもしその労働者が無期転換権を持つのであれば、書面の中であなたはそういう権利がありますよとしっかり教えてあげてくださいね、という風になるわけです。

4.無期転換後の労働条件

もし無期労働契約に転換したならば労働条件はこうなりますということもしっかりと書面で明示してくださいということになります。

②専門業務型裁量労働制を適用する際には本人の同意が必要〈4月施行〉

専門業務型裁量労働制というのは、業務の性質上仕事の進め方を労働者に大幅に委ねる必要がある業務で厚生労働省が認めたものについては労使協定を締結して労働基準監督署に届け出ることによってみなし労働時間を適用することができるということなんですけれども、このみなし労働時間というのは例えば労使協定の中でみなし労働時間8時間と定めたならば実際の労働時間が10時間であろうが6時間であろうが8時間働いたものとみなす、という制度のことなんですね。今まで労働者の過半数代表者の方と労使協定を締結して労基署に届け出ておけば会社が必要と認めた労働者に対して適用することができたんですけれども、4月以降は労働者一人ひとりの個別同意が必要になるというように変わります。要は、適用対象者一人ひとりにこの専門業務型裁量労働制を適用しますけどいいですかと聞いて、私は嫌ですと言った場合にはその方にはもう適用できなくなるということです。すでに現在適用している会社さんでまだ労使協定の期間が4月以降残っていたとしても、4月以降労使協定を出し直す必要がありますので注意してください。

③時間外労働の上限規制の適用猶予が終了〈4月施行〉

建設業・自動車運転業務・医師・砂糖製造業(鹿児島・沖縄)の4つの業務は時間外労働の上限規制が今までは猶予されていました。時間外労働の上限規制とは、36協定という労使協定を届け出ていればその範囲内で残業させることができるというルールがあるんですけれども、その36協定に書ける残業させられる時間数というのは原則として月45時間・年360時間と法律で決まっています。先ほどの4つの業務はその特殊性から時間外労働の上限規制にかけるのは難しいだろうということで今までは適用が猶予されていたんですね。ところが4月以降に関しては一部特例は残るものの基本的には時間外労働の上限規制の猶予期間が終わって適用開始ということになります。よく建設業とか運送業の2024年問題ということを耳にした方もいらっしゃるかと思うんですが、まさにこのことなんですね。トラック・バス・タクシーのドライバー、そういった方に今までさせていたような長時間労働がさせられなくなるということで、その分新たに人を雇い入れなきゃいけないけどなかなか容易じゃないので人手不足になるということが予想される、これがいわゆる建設業や運送業の2024年問題ということになるわけです。

④障害者雇用率が2.3%から2.5%へ引き上げ〈4月施行〉

これは民間企業の場合ですね。4月以降は従業員が40人以上の会社は1人以上の障害者を雇用する必要があるということになります。

⑤51人以上の企業のパートタイマーにも社会保険の適用拡大〈10月施行〉

この51人以上というのは従業員数のことではなくて厚生年金の被保険者数でみていきます。厚生年金被保険者数が51人以上いる企業では今まで社会保険に加入していなかったパートタイマーやアルバイトであっても次の4つの条件を全部満たした場合にはその方は社会保険に加入しなければならなくなるということになります。

・週所定労働時間労働時間20時間以上

・月額賃金88,000円以上

・2カ月超の雇用見込

・学生ではない

現在は厚生年金被保険者数が101人以上の企業でこのパートタイマーの社会保険の適用拡大が行われていますが、2024年10月以降は51人以上の企業でも適用拡大が行われるということになるわけです。4つの条件を全部満たすと今まで社会保険に加入していなかったパートさんでも社会保険に入れなきゃいけなくなるので事前の準備が必要になってきます。この月額賃金88,000円なんですが、12倍して年収に換算すると約106万円になるんですね。106万円の壁なんて言葉を耳にされた方もいらっしゃるかと思いますがこのことを言っているわけです。

いかがでしたでしょうか。これとこれはうちでも関係ありそうだな、というものがあったんじゃないでしょうか。十分注意していただいて早めの準備をしていただければと思います。今回は「2024年に施行される労働関係の法改正」についてお話をしました。これからの労務管理に少しでも参考になれば幸いです。

執筆者
志賀 直樹

社会保険労務士法人ジオフィス代表

300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。

保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員

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