お昼ご飯を食べた後の会議などでついウトウトしてしまうことって誰にでもありますが、ここで言っている居眠りというのはそういう時々の話ではなくて、もう毎日のようにしょっちゅう居眠りをしている従業員がいた場合に、どのように対応したら良いのかというお話しになります。
労働者は労働契約に基づいて労務提供義務を負っています。
居眠りをしているということは、寝ているわけですから仕事していないので、この労務提供をしていないという状態にあります。
つまり頻繁に居眠りをしているということは、労務の提供が不完全な状態であるということが言えます。
また職場の風紀秩序を乱すことにもなりますよね。周りの人間もモチベーションが下がってしまうことにもなりかねません。会社としては一体どのような対応を取ればよいのでしょうか?
仕事中の居眠りの原因が「病気の場合」と「病気ではない場合」で、対応方法が異なります
居眠りの原因が病気であれば、就業規則にルールの明記で解決につながる
睡眠時無呼吸症候群やナルコレプシー(過眠症)など、こういった病気が居眠りの原因ということであれば、治療して頂くことが必要ですよね。医療機関に行って診察を受けていただきたいですが、従業員にそのように勧めても、なかなか応じてくれないこともあるでしょう。
そうならないために、就業規則に下記ルールを規定しておく必要があります。
業務上の必要性があり会社が命じた場合には、従業員は受診義務あるいは診断書提出義務を負う
こうしたルールを就業規則に規定しておくことで、従業員に医療機関の診察をスムーズに受けて頂くことができます。
短期間で治療できる場合は、有給の取得や欠勤をして頂く
通常の業務を続けながら治療できるかどうかは、治療期間がどれくらいかによると思います。
短期間であれば、年次有給休暇を取得して治療していただくことができますが、年次有給休暇がないような場合は欠勤していただく病欠というような扱いになるかと思います。
ただ欠勤に関しては、通常は欠勤控除ノーワークノーペイの原則に基づいて働かなかった分の賃金は支払われず給与が減額されるのが一般的です。
治療が長期間にわたる場合は、休職して頂く
治療が長期間にわたる場合には、会社に休職制度があれば休職していただくことになると思います。休職制度の内容は、勤続年数に応じて休職期間が定められていて、その休職期間が満了しても復職できない場合には自然退職になる、という規定になっているのが一般的だと思います。
休職制度がない会社もありますよね。休職制度は法的な義務ではないので、必ずしも定める必要はないのですが、このような場合には、「労働契約を解消しませんか」ということで退職勧奨または普通解雇を行います。経営者からしてみれば普通解雇を行いたいところですが、解雇はどのような解雇であっても不当解雇だと言われるリスクがありますので、できれば避けたいところです。なるべく話し合っていただき、退職勧奨に応じていただいて、合意退職で落としどころを見つけていただくのが良いでしょう。
その場合「退職合意書」というものが絶対に必要になりますので、こちらをご参考にしてください。>>退職合意書の作り方(サンプルもダウンロードできます)
居眠りの原因が病気でない場合は「会社に責任がある場合」と「本人に責任がある場合」で、対応方法が異なる
会社に責任がある場合は、原因を取り除く
例えば、「長時間残業をやらせていて従業員さんがヘトヘトになっている」というような場合は、従業員を責めるわけにはいきませんので、その原因を取り除く必要があります。
>>労務管理の必須知識! 過労死ラインについて
本人に責任がある場合は、注意指導をし、それでも改まらなければ懲戒処分もあり得る
本人に責任がある場合、例えば夜中にゲームをやっている、夜遊び・深酒をしている、夜無許可で副業をしている、などの場合は、まずは本人とよく話し合っていただく必要があります。原因を特定し原因を取り除く、つまりそういうことをやめていただくことになります。
仕事中は居眠りをせず職務に専念してくださいといった注意指導を行うことになりますが、何度注意指導しても改まらない場合には懲戒処分をしていただくことになります。懲戒処分は、いきなり重い処分は認められませんので、まず始末書を書かせるけん責処分から段階的にやっていく必要があります。
ただ、居眠りで出勤停止・懲戒解雇は無理があるのでないかと思います。注意指導を繰り返し行い、改まらなければけん責、せいぜい減給処分といったところまでやり、それでも改まらなければ労働契約を解消する方向に進めていきましょう。
しかし何度も言うようですが、解雇を認めてもらうのはハードルが高いです。なるべくなら解雇ではなくて退職勧奨、合意退職といったところが一番良いと考えます。
【まとめ】仕事中に居眠りする社員への対応
- 居眠りの原因が病気であれば、就業規則に業務上の必要性があり会社が命じた場合には、従業員は受診義務あるいは診断書提出義務を負うというルールの記載で、解決につながる
- 居眠りの原因が病気ではなく、本人の日頃の行いが原因の場合は
注意指導→懲戒処分(始末書を書かせるけん責処分や減給処分など)→労働契約の解消
という段階的な流れを踏む - 労働契約の解消については、解雇という形は難しいので、退職勧奨や合意退職という方向にもっていく
仕事中に従業員さんがしょっちゅう寝ているとその方の労務提供が不完全なだけでなく、職場全体の雰囲気が悪くなります。みんなのモチベーションが下がり生産性も落ちてしまいますよね。やはり会社としては居眠りをする従業員に対して何らかの対応を取る必要があります。
今回は「仕事中によく居眠りをする従業員への対応は?」についてお話をしました。これからの労務管理に少しでも参考になれば幸いです。
執筆者
志賀 直樹
社会保険労務士法人ジオフィス代表
300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。
保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員