こんにちは。社労士の志賀です。今回は「遅延証明書があれば遅刻にならないのか?」についてお話をしていきます。
ここで言う遅刻にならないのかというのは、遅刻扱いとなって、その遅刻した分が給料から減額される所謂「遅刻控除」があるのかどうかということです。遅延証明書さえ見せれば問題ないのかという意味です。遅延証明書というのは皆さんご存知かと思います。以前は改札口で駅員さんが配っていたものでしたが、紙での配布は少なくなっているようで、必要な方は鉄道会社のホームページからダウンロードして印刷するという方式に変わっているようです。
実際にJR東日本のホームページから遅延証明書を印刷してみました。今日電車に乗ったわけではありません。検索でヒットしてこのように誰でも印刷できてしまいます。今回の場合午前7時~8時の間において10分遅延した証明書となっています。注意書きとして「始発から7時の間にその路線で発生した最大の遅延を証明するものであり、個々の列車の遅延を証明するものではありません」と記載があります。また「お客様がご乗車されたことを証明するものではありません」とも記載があります。現に乗っていない私でも印刷できてしまいます。
今回どうしてこういうテーマの動画を作ろうかと思ったかというと、ある会社さんからの相談がありまして、毎日始業時刻ギリギリに出勤する社員がいて、ちょっとした遅刻が多いことに困っているというものでした。そしてその社員の方は結構な確率で遅延証明書を持ってきて、これさえあれば遅刻にならないと主張するという内容でした。それが会社側からは納得できず、遅延証明書があれば遅刻扱いにならないという法律があるのかという質問がありました。それに対してお答えするような意味も含めて今回動画にしています。

まず遅延証明書があれば賃金の減額をされることは無いのかという話なので、まず賃金とはそもそも何なのかというところから確認していきたいと思います。
賃金=労働の対価
従業員と会社は労働契約を結んでいます。その契約の内容というのは労働者は労働力を提供、会社はその対価として賃金を支払うというものです。つまり賃金というのは労働の対価で会社側から従業員に支払われるものだということです。そうすると遅刻したということは、その遅刻した分に関しては労働していないのですが、それに対して賃金はどうなるのかというのが今回のテーマです。そしてノーワークノーペイという原則を皆さんご存じの方も多いかと思いますが、これは労働していない時間に賃金は支払われないというものです。ただ会社都合の場合はもちろん別です。そこは休業手当を支給する必要があります。
ということは、今回のお題に対する結論は以下の通りです。
原則 遅延証明書があっても遅刻であり、給与は遅刻した分だけ控除される
遅延証明書があれば遅刻扱いしてはいけないという法律はありません。
特例 遅延証明書があれば遅刻扱いせず、給与を控除しない
このような対応を取る会社も結構多いです。就業規則等で定められている場合には遅刻控除はできません。あくまでこれは会社が任意で定めるものであり法律で定められているわけではありません。
特例を運用している会社も多く存在しますが、その一方で冒頭でご紹介したようにこれを悪用ケースがあり得ます。自分の都合で遅刻したものをホームページを見たら遅延証明書が発行されていたのでそれを印刷して提出するケースもあるようです。このような悪用を避けるために1つ考えられる方法としては条件をつけることで回避できる場合があります。
【例】・10分以下の遅延の場合には救済しない ・月に1回までは遅刻扱いしないが、2回目以降は遅刻として給与を控除する
法律上定められているわけではないので会社ごとに原則にするかと特例にするか決めていただければと思います。ただし特例を運用する場合には一定の条件をつけないと悪用されるケースがありますので注意してください。
いかがでしたでしょうか。本来は従業員は始業時間には業務を開始できるように少し余裕を持って出社すべきですよね。毎日ギリギリに駆け込んでくる社員が遅延証明書による救済制度を悪用するようなことがまかり通るようでは、しっかりと始業時刻から業務が開始できるよう余裕をもって出社しているその他の社員との間に不公平が生じてしまいます。ですから今回ご紹介したように、この遅延証明書による特例制度を設けるにしても、遅延証明書を提出し会社が認めた場合に限り遅刻とカウントしないという取り扱いが考えられますので、この機会にご検討いただければと思います。
今回は「遅延証明書があれば遅刻にならないのか?」についてお話をしました。少しでも参考になれば幸いです。


