こんにちは。社会保険労務士の志賀です。今回は「育児休業給付金と出産手当金は同時に受給できるのか?」についてお話していきます。
今回のタイトルについてですが、正確に言うと第一子の育児休業給付金を受けている間に同時に第二子の出産手当金を重ねて貰うことができるのかというお話になります。そんなことできるわけがないと思われるかもしれませんが、これはある方法を取ることによって実は可能になります。ただあくまでも第一子の育児休業期間中に第二子が産まれる場合の話ですから、状況としてはかなり限定的になります。自分には関係ないと思われる方もいるかもしれませんが、今回のお話を聞いていただければ、産前産後休業・育児休業給付金・出産手当金の制度の基本的な考え方が再確認できると思いますので、最後まご覧いただければ幸いです。
まずどうすればこれが同時に貰えるかというお話の前に、先ほど言った3つの制度について説明していきたいと思います。ただし今回の動画の中では前提として2つの条件を挙げます。
①出産日=出産予定日と仮定
②休業中は無給

産前産後休業 ●労働基準法で定められており出産する女性全てに適用
・産前休業 → 産前6週間以内の女性が請求したら就業禁止 ※本人が請求しない場合は取得しなくてもよい
・産後休業 → 産後8週間は就業禁止 ※本人の希望の有無に関係なく就業禁止
育児休業給付金 ●雇用保険法の制度であるため雇用保険の被保険者のみに適用
被保険者が育児休業を取得した場合に支給する給付金。女性に限らず男性も可。
出産手当金 ●健康保険法の制度であるため健康保険の被保険者で出産する女性のみに適用
被保険者が出産した時は出産日以前42日から出産日後56日までの間において労務に服さなかった期間支給する手当金。
上記の各制度を説明した上で今回の本題である第一子の育児休業給付金を受けている間に第二子の出産手当金を同時に貰うことはできるのかという話に入っていきたいと思います。まず具体的な例として2種類のケースを挙げます。下記の図をご覧ください。

まずケース①が一般的なものです。第一子の育児休業を取得していたところ第二子を妊娠して出産日以前42日が産前休業、出産日後が56日となりその間は出産手当金が支給され、第一子の育児休業は自動的に終了となり育児休業給付金も支給終了となるのが一般的です。
そして冒頭にお話ししたある方法を取れば併給可というお話をしましたが、それがケース②です。これはケース①同様に第一子の育児休業を取得し第二子の出産予定日が図の通りです。出産予定日から6週間前に産前休業を取得しようと思えば取れるわけですが、これは強制ではなく任意のため、産前休業を請求しなかった場合には第二子の産前休業は始まらないので第一子の育児休業は続くことになります。そして出産日を迎えたら産後は本人の希望の有無関係なく就業禁止なので産後休業に入ります。そうすると第二子の産後休業が始まったということで第一子の育児休業がここで終了しますが、第二子の出産日までは第一子の育児休業給付金が支給されることになります。
それでは出産手当金はどうなるのかというと、産前休業を取得していないので産後休業分だけしか支給されないと思うかもしれませんが、健康保険法には「出産日以前42日から出産日後56日までの間において労務に服さなかった期間支給する」と記載があります。産前産後休業を取得している間とは書いてありません。労務に服さなかった期間に支給するというわけなので、産前休業を取得していなくても働いていないことには間違いないので申請をすれば産前の42日分に関しても支給されます。よって育児休業給付金と出産手当金は併給可能となります。
いかがでしたでしょうか。産前休業を取得しなくても育児休業給付金と出産手当金を支給されるというのは違和感を感じるかもしれません。これは先ほど説明したように育児休業給付金は雇用保険上の制度、出産手当金は健康保険上の制度ということで別々の制度に基づく制度であることを覚えて下さい。そして現在のところ、この併給を規制するルールというものはないので、育児休業給付金と出産手当金は同時に貰うことが可能ということが今回の結論になります。
今回は「育児休業給付金と出産手当金は同時に受給できるのか?」についてお話ししました。少しでも参考になれば幸いです。

執筆者

志賀 直樹
社会保険労務士法人ジオフィス代表
300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。
保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員


