こんにちは。社会保険労務士の志賀です。今回は「退職後も傷病手当金をもらうための条件とは?」についてお話をしていきます。今回は協会けんぽを例にとってお話をしていきますが、健康保険組合でも似たような制度になっているかと思いますので参考になるかと思います。
それでは傷病手当金とは何かというところからおさらいしていきます。別動画でも詳しく説明していますので、そちらもご覧下さい。
傷病手当金 業務外の傷病で労務不能になり4日以上出勤なしの場合に健康保険から支給される
※仕事中のケースは労災の対象
※待機期間が3日あり実際に支給されるのはお休み4日目以降から
※お休みの期間に傷病手当金の額より多い給料が支給されていると不支給

この傷病手当金は健康保険から支給されるものなので働いている時にしか貰えないものと通常理解されているかと思いますが、ある条件を満たせば会社を退職した後でも受給することができます。ではそれがそういう条件なのか、今回のテーマになります。
条件① 退職日までに被保険者期間が継続して1年以上ある。
この被保険者期間というのは今回は協会けんぽを例にとって説明していますが、仮に健康保険組合に入っていて1日の空白もなく転職等で協会けんぽに変わった場合でも空白期間がなければ継続して1年のカウントに含めることが可能です。ただし任意継続被保険者であった期間や国民健康保険の被保険者だった期間というのは1年のカウントには含めることができませんので注意してください。
条件② 退職日の前日までに連続して3日以上出勤せず、退職日も出勤していない。 ※ただ単に休んでいるわけではなく医師が労務不能と認めることが必要
こちらは分かりづらいので図にしてみました。

例として7/28から休んでいて7/31に退職。そして退職後に受給できるかどうかという話なのですが、7/27は通常通り出勤しましたが何らかの私傷病で7/28から働けなくなりお休みし退職日についてもお休みしています。よって条件②は満たしていますが、半日でも退職手続きのために出勤したりすると適用になりません。ただこの待機期間は有給休暇問題ありません。待機期間が3日あり退職日にも出勤していないことが重要です。ただ有給休暇の場合にはその期間の傷病手当金は不支給扱いとなります。
条件③ 在職中と同じ傷病で引き続き労務不能であること
私傷病であれば何でも良いというわけではく在職中と同じ傷病で医師からの労務不能と証明があることが条件となります。
ただし注意点があります。
①在職時に加入していた支部に本人が申請
在職中は会社が申請していましたが退職後は当然本人からの申請が必要です。申請書などは協会けんぽのホームページからダウンロード可能です。退職後の申請については会社の証明は不要です。
②断続しての需給はできない
在職中の傷病手当金は休んだ後に出勤していても医師が証明していれば休んだ日が飛び飛びになっていたとしても給与の支払いがあった日を除いて傷病手当金の支給がありましたが、退職後についてはこの方法 が不可能となります。一度労務可能となって、また発症したとしても申請はできません。
③支給開始から通算1年6ヵ月まで
在職中に支給を開始し休職期間を経て退職した場合でも在職中に支給されていた期間も含んだ1年半で受給は終了となります。
いかがでしたでしょうか。先ほど少し触れましたが休職期間満了で退職になったようなケースの場合には退職するともちろん給料がなくなりますので、無理に働く人もいるようですが退職後も要件を満たせば受給可能なセーフティーネットがありますので、無理に働こうとせず一度療養に専念することも必要かと思います。そして時々退職後の傷病手当金と失業保険は両方受給可能なのか質問をいただくことがありますが、これは不可能です。失業保険は働ける状態にある方が職探しをして見つからない時のための制度となりますので、傷病手当金は働けないから貰えるものですので混同しないように注意してください。
今回は回は「退職後も傷病手当金をもらうための条件とは?」についてお話をしていきました。少しでも参考になれば幸いです。
執筆者

志賀 直樹
社会保険労務士法人ジオフィス代表
300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。
保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員


