いわゆる「闇バイト」が実行役を募集するときにSNSが利用されることがあります。そのため、一般企業がSNSを活用して労働者を募集するときには、「闇バイト」と誤解されないようにする必要があります。どうすればよいか社労士が解説します。

こんにちは。社会保険労務士の志賀です。今回は「闇バイトと誤解されないSNS求人の注意点」についてお話をします。

タイトルの中にSNS求人という言葉が入っていますが、  これはSNSを活用して労働者を募集する行為のことをここでは言っています。ではそもそもSNSって何だっけ?ということを念のため確認しておきますと、SNSとはソーシャルネットワークサービスの略でインターネット上で人々が情報共有するためのプラットフォームのことを言います。例えばFacebook、X、Instagramなどが含まれます。これは似た言葉でSMSという言葉がありますが、これは違います。SMSというのはショートメッセージの略です。携帯番号を使ってメッセージをやり取りするサービスのことなので混同しないようにしていただければと思います。

このSNSなのですが強盗や詐欺などのいわゆる闇バイトの実行役を集めるときにこのSNSが活用されることがあるようです。その一方で低価格・低コストで広範囲にリサーチできるという特徴がありますので一般企業においても労働者募集をする際にこのSNSが活用されることが増えています。ということはこの2つを区別していかなければなりません。先ほど言った闇バイトの実行役の募集はあたかも一般企業の労働者募集であるかのように表現されていることもあるので間違えてしまうと大変なことになってしまいます。ですから応募する方も一般企業の求人なのか闇バイトなのか区別していかなければいけませんし、実際求人を出す会社側も混同されないように誤解されないようにしていかなければいけません。闇バイトだと思われてしまう求人広告を出しますと、もちろん応募者数が減ってしまいますので誤解されないようにしていかなければいけないということで、そのためにはどうしたらいいのかというお話です。

闇バイトはSNS上で実行役を募るときの表現の特徴があり、これは具体的な労働条件が書いてありません。あたかも短期間で高収入が簡単に得られるようなことが記載されており、とにかく問い合わせをさせる手法が多いのではないかと思います。そこには具体的な労働条件が書いておらず、いくつかの表現がされていることが多いです。例えば「ホワイト案件」「即日即金」「高額バイト」など要するに少し煽るような表現がされていて具体的なことはあまり書いていません。ですからこのような文言の記載が出てきたらやめた方が良いと思えば良いですし、一般企業がSNS求人を使用するときはこういう言葉を使用してはいけないわけです。

実はそのSNS求人を募る際にも必ず記載しなければならないものが法律で決まっています。順番に見ていきますが①~⑥の情報は必ず記載が必要な情報になります。これを6情報と言ったりしますが、必ずこれを書いておけば通常の一般企業の求人だと見た人が思いますので、その意味でもこれを書いておくことが必要になります。

①求人者・募集者の氏名(名称)

②住所(所在地)

③連絡先(電話番号など)

④業務内容

⑤就業場所

⑥賃金

以上の内容を記載していないと違法になってしまいます。法律で必ず記載するように決まっているものですから内容を網羅していない求人を打つと違法になります。①~⑥を詳しく説明します。

①求人者・募集者の氏名(名称)

求人者と募集者とは何が違うのかと思うかもしれませんが、求人者は人を採用したい会社の事で、募集者は何かと言いますと、職業紹介事業者などが該当するかと思います。職業紹介事業者とは代表的なものはハローワークです。公共の無料の職業紹介事業者です。それから民間の紹介会社なども職業紹介事業者に当てはまります。

例えばインターネットハローワークサービスを見たことがある方は、そこに事業所名が書いていないケースがあるとご存じの方もいらっしゃるかと思います。これは違法なのかと思いますが、インターネット上では非表示にしているだけで問い合わせが実際にあればもちろん公開する仕組みになっていますので違法ではないということになります。

②住所

これはビル名、階数、部屋番号などをしっかり記載することが必要です。

③連絡先

電話番号、メールアドレス、自社のウェブサイト上の問い合わせフォームのリンクを記載することでもいいとされています。

④業務内容 ⑤就業場所 ⑥賃金

昨年令和6年4月以降、労働条件の明示に関するルールが法改正されました。ご存じの方もいるかもしれませんが労働条件通知書には業務内容や就業場所、雇入れ直後の場所や業務を書き、変更の範囲も書かなければいけないというルールになっています。ただSNS求人上の表現ではそこまでは求められていません。少なくとも雇入れ直後の業務内容や就業場所が書いてあれば良いとされています。それも複数のものを記載して要相談として記載するのも直ちに違法ではないということになっています。それから賃金についても労働条件通知であれば金額をきちんと記載しなければならないのですが、例えば時給1500円~等の表現も直ちに違法ではありません。

このように①~⑥まで記載していないと違法になるということです。

ただSNS上にはこの6情報が記載されておらず、自社のホームページ上の所定のコーナーには6情報が記載されている場合にそこに対するリンクを貼っていれば良いと考える企業もありますが、それは違法です。そのような方法だと、そもそもリンクが本当に求人なのかハッキリしないということで、SNSの求人を打つのであれば、SNS上に6情報が記載されていないといけないということになります。ですから一般企業がSNSを活用して求人を出すという場合には必ず6情報を記載するようにしていただければと思います。

いかがでしたでしょうか。今回は闇バイトと誤解されないSNS求人の注意点として一般企業がSNSを活用して労働者を募集するときの記載事項についてご説明しましたけれども、これは業務委託するフリーランスの方を募集する場合にも、説明した6情報が必要になります。少しでも参考になれば幸いです。

執筆者
志賀 直樹

社会保険労務士法人ジオフィス代表

300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。

保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員

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