こんにちは。社会保険労務士の志賀です。今回は「罰則あり!2025年6月から義務化の熱中症対策」についてお話をします。
最近夏が異常に暑くなっていますよね。熱中症も大変増えています。こちらのグラフを見てください。(職場における熱中症による死傷災害の発生状況@厚生労働省より)
2021年~2023年に熱中症による死傷者数がどのように推移しているかを表しています。この死傷者数というのは死亡又は休業4日以上の人数を集計したものです。2021年には561人、2022年には827人、2023年には1,106人と更に2024年にはもっと増えているわけなのですが、この3年間を見ていただくとうなぎ登りに増えていることが分かります。右肩上がりで増えているということです。これ実は建設業と製造業で全体の4割を占めています。建設業と製造業は熱中症が非常に多い業種です。この1,106人のうち31人の方が死亡しているということになります。この死亡してしまう原因ですが、ほとんどが初期対応の遅れです。早期に発見して適切な措置を取っていれば死なないで済んだものを適切な措置をしなかったために重症化して死亡してしまったということです。このようなことを踏まえて今年の6月から労働安全衛生規則の中での改正が行われて義務化されたことがありますので今回それをご紹介していきます。
現在の法令では熱中症対策として、水と塩を準備するということが決まっています。ところが早期発見や早期の適切な対応に関しては義務付けられているものがありません。今回義務付けられるのは3点です。義務付けられる対象は【暑さ指数28度以上または気温31度以上の環境で、連続1時間以上または1日4時間以上の作業を行う現場】です。
ここで暑さ指数という言葉が出てきました。これはご存じない方もいらっしゃるかもしれないので説明しおきます。

暑さ指数(WBGT)
気温、湿度、輻射熱(日差しや地面、建物などから出る熱)の3つを取り入れた熱中症の危険度を判断する数値。28度以上になると熱中症は急増する。
これは測定器が売っており高いものではないので是非そういったものをご用意いただくことも必要かと思います。28度以上になると熱中症は急増するというのはデータが出ています。ですから厳重警戒というわけです。28度と書いてありますが気温も何度という言い方をするので間違えないように気を付けてください。28度と言ったときに気温を言っているのか、暑さ指数を言っているのかぱっと見ですと同じ●度という表現になっているので暑さ指数28度以上になると熱中症は急増すると厳重警戒が必要になるということを覚えて下さい。それでは義務付けられる3つを見ていきましょう。
①報告体制の整備
「熱中症の自覚症状のある労働者」や「熱中症の恐れがある労働者を見つけた者」がその旨を報告するための体制を整備する。
→連絡方法や担当者をはっきり決める。
②対応手順の作成
作業中止、身体冷却、医療機関への搬送など重症化を防ぐための手順を定める。
→あらかじめ手順を決めそれに則り対応していく環境を整備する
③関係者への周知
以上3つが義務化されます。余談ですが今までの水と塩分を用意するというのは、水だけ飲むことは余計脱水症状になることがあるらしいです。ですから水と塩は両方取る必要があります。この現在の法令でも義務付けられているものに加えて今年の6月からは重症化を防ぐようね体制づくりが義務化されますのでよろしくお願いいたします。
はい、いかがでしたでしょうか。罰則ありと記載しながら罰則の話には触れませんでしたが、これらの熱中症対策の義務に違反すると、6か月以下の拘禁刑または50万以下の罰金が科される可能性がありますので十分注意していただければと思います。
というわけで今回は「罰則あり!2025年6月から義務化の熱中症対策」についてお話をしました。少しでも参考になれば幸いです。

執筆者

志賀 直樹
社会保険労務士法人ジオフィス代表
300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。
保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員