育児短時間勤務中に給料が下がった場合、それを補填してくれる制度は今までありませんでした。令和7年4月1日以降に時短勤務を開始される方を対象に育児時短就業給付が創設されます。制度の内容を社労士が解説します。

こんにちは。社会保険労務士の志賀です。

今回は、「2025年4月~、育児時短就業給付が始まります!」についてお話をします。

さて、今回のタイトルが前回のタイトルとそっくりなのですけれども、前回は「2025年4月~出生後休業支援給付が始まります」というタイトルでご説明しました。

つまり、2025年4月から、出生後休業支援給付も始まるし、今回の育児時短就業給付も同時に始まりますというわけなのです。

この育児時短就業給付の説明をする前に、「育児短時間勤務」についてご説明していきます。

育児短時間勤務制度とは、3歳未満の子どもを育てる労働者(男女問わずです)が希望することで、原則6時間の短時間勤務ができるという制度です。
これは、従来からあった制度です。

仮に所定労働時間が8時間だった場合、労働者が申し出て短時間勤務をしたとき(育休明けとかによく短時間勤務をするのですけれども)に、その労働時間が通常8時間だったものが6時間になり、そうするとお給料が、通常はそのままということは無くて一般的には8分の6程度、時間に見合ったお給料となります。

例えばある労働者のお給料が、短時間勤務に入る前、従来の労働時間8時間で月給32万円だったとします。その後6時間の短時間勤務に入り、お給料が従来の8分の6である、24万円になりました。
労働時間は短くなって育児などがしやすくなったのですけれども、その分お給料の面では32万円が24万円になってしまう。
8万円の差です。大きいですよね、8万円下がってしまうと。

ですから、この収入が下がるということを恐れて、この育児短時間勤務を取らないで通常通り働いているという方も結構いらっしゃいます。

今までは、この収入減を補填するような制度はなかったのですね。

そこに対して今回できたのが、育児時短就業給付なのです

これは短時間勤務での減額に対して補填する給付なのですけれども、この制度は「2歳未満の子を育てるために短時間勤務をしている労働者に賃金の10%が支給される」という制度です。

先ほどご説明しました育児時短勤務は「3歳未満の子」で、育児時短就業給付は「2歳未満」です。そこを間違えないでくださいね。

「2歳未満の子を育てる労働者(これもやはり男女は問わず)が短時間勤務をしたのであれば、下がった賃金の10%が支給されますよ」ということです。

ただし、「元々の賃金の10%ではなくて、下がった賃金、時短勤務中に支払われている賃金の10%がもらえる」、それがこの育児時短就業給付です。

具体的に見ていきますと、先ほどの例では、32万円が24万円に下がってしまったので、短勤務中の賃金は24万円支払われて、その賃金の10%ですから、24万円の10%ということで2万4000円が育児時短就業給付だということになります。

合わせて26万4000円が手に入ると、こういうわけなのですけれども、この10%という給付率、これは今回下がり幅が大きいから良いのですけれども、ちょっとしか下がっていないケース、例えば今の例は32万円が24万円に下がった場合の話をしましたが、下がる前の賃金を100%と考えたときにこの24万円は75%ということになります。

こういう風に下がり幅が大きい場合は問題ないのですけれども、例えば下がったけれども、32万円が30万円に下がった場合、下がり幅が小さいです。

こういう場合、この30万円に対して10%支給されてしまうと30万円の10%は3万円ですから、この方は合わせて33万円をもらうということになります。これでは元々の賃金よりも高くなってしまいます。こういう場合は調整されます。

32万円を100%と考えたときに、30万円は93.75%になります。

この下がった賃金が元々の賃金の90%以上だったというような場合には、10%支給してしまうと100%を超えてしまいますので、その場合はこの10%という支給率は徐々に調整をされていきます

また、もちろん下がらない場合、短時間勤務をしたけれどもお給料が下がらない場合には、もちろん育児時短就業給付はもらえないということになります。

いかがでしたでしょうか。現在少子化が急激に進んでいて、それに伴って労働力人口がどんどん減ってしまっています。これをそのまま放置すると、もう社会が回らなくなって国力低下に繋がってしまうというわけで、これを放置しておくわけにはいかないと。そこで異次元の少子化対策ではないですけれども、仕事と子育てを両立しやすい社会を作ろうということで、色々な制度が導入されているのですけれども、今回のこの育児時短就業給付を作ったのもその一つというわけなのです。

今回は、「2025年4月~、育児時短就業給付が始まります!」についてお話をしました。

少しでも参考になれば幸いです。

執筆者
志賀 直樹

社会保険労務士法人ジオフィス代表

300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。

保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員

プロフィールをもっと見る>>

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です