令和7年4月、出生後休業支援給付が創設されます。両親ともに育児休業を取得する場合、条件を満たすと、休業開始前賃金の13%相当が給付される制度です。社労士が詳しく解説します。

こんにちは。社会保険労務士の志賀です。

今回は、「2025年4月~、出生後休業支援給付が始まります!」についてお話をします。

2025年4月から、出生後休業支援給付という制度が創設されます。

これは一体どういう制度なのでしょうか?一緒に見ていきましょう。

この出生後休業支援給付というものは、子の出生直後の一定期間、①と②の条件を満たしたときに③が支給されるという制度です。

①男性(お父さん)は出生後8週間以内、女性(お母さん)は産後休業後8週間以内に

②両親ともにそれぞれ14日以上の育児休業を取得すると

③それぞれ最大28日間、休業前賃金の13%相当額が支給される

子供が生まれて、その出生直後の一定期間、お父さんの場合は生まれてから8週間以内、お母さんの場合はまず産後休業を取って、その産後休業が終わってから8週間以内に、どちらも14日以上育児休業を取得したという場合に、それぞれ父親にも母親にも、最大28日間、休業前賃金の13%相当額が支給されるということです。

休業前賃金というのは、育児休業に入る前の賃金ですね。正確に言うと、休業開始時賃金と言って、休業に入る直前の給料6ヵ月の平均をとって求めます。

先ほど、両親ともに14日以上の育児休業を取らなければダメだという条件があると言いましたが、これは配偶者が専業主婦(夫)の場合、あるいは一人親家庭といった場合には、もちろん育児休業取れませんから、この条件は適用されません。配偶者の育休取得は不要と、この条件は満たさなくていいですよ、とこういうことになります。

この出生後休業支援給付がされることで、実質的に手取りの10割相当がもらえることになるという言われ方をするのですが、なぜ休業前賃金の13%をもらえると手取りの10割相当がもらえるということになるのか、ちょっとここが分かりにくいかもしれませんので、一緒に見ていきましょう。

まず、赤ちゃんが生まれたら、生んだ母親の方は、出産後8週間は産後休業を取り、それから育児休業がスタートします。

この産後休業を取っている間は、健康保険に入っていれば健康保険から出産手当金といって、大体給料の2/3が支給されます。

そして、産後休業終了後に育児休業が開始されて、育休開始後180日間はこの休業前賃金の67%の育児休業給付金が支給されます。

そしてそれ以降も、原則として子が通常1歳になるまで育児休業を取れますから、180日以降は休業前の50%が育児休業給付金として支給されます。これは現行の制度です。

お父さんの方は産後休業というのは特に無くて、出生後は育児休業を取っていくことになります。

長い育児休業を取られる方もいらっしゃいますが、女性に比べると比較的短期間の育児休業を取得されるという方も男性の場合は多いですよね。

そして、育児休業を取れば当然父親にだって休業前賃金の67%が支給されます。

母親はずっと育児休業を取っていますから当然14日以上になりますよね。

男性の方もここで14日以上、ちょうど母親が産後休業を取っている期間が8週間なので、ここで14日以上の育児休業を取り、そして母親も育児休業を取ったならば、「両親ともにそれぞれ14日以上の育児休業を取得した」いう状況となって、上限28日間(父親と母親を合わせてではなく、それぞれ28日)で、休業前賃金の13%が、現行の制度に上乗せで支給されるということになります。

それではなぜ「手取り10割相当」になるのでしょう。

もともと休業前賃金の67%が支給されているところに、13%の上乗せがされる。すると合わせて80%になります。
それで8割でしょう、と思われるかと思いますが、通常、給料というものは税金や社会保険料等が控除されると手取りは8割くらいになってしまいますよね。

この育児休業期間中は、社会保険料は免除になりますし、育児休業給付金には税金がかかりません。非課税となります。

そうすると8割をそのままもらえるということになります。

28日間ですけれど、税金や社会保険料を引かれた休業前賃金の手取りと変わらない額がもらえると、こういうことになります。

お気づきになられた方もいらっしゃると思いますが、ちょうどこの出生後8週間というのは出生時育児休業(産後パパ育休:子の出生後8週間以内に4週間まで取得できる)を取ることができる期間です。

赤ちゃんを産んだお母さんは産後休業を取り、お父さんは育児休業を取りますが、産後8週間の間というのは出生時育児休業も利用できる期間なので、そういったものの活用を促すための施策だということも1つ言えるのではないかなと思います。

以上が2025年4月から開始される出生後休業支援給付というものの内容になります。

これは2025年4月以降にこの条件を満たした場合に支給されるということになりますので、よろしくお願い致します。

いかがでしたでしょうか。

男性の育児休業。先ほどありました出生時育児休業(産後パパ育休)というものも当然育児休業の一種ですから、育児休業を取得したことになりますし、給付金も出るわけなのですけれども、出生時育児休業および育児休業取得率というのはまだまだ低く、以前に比べて大分上がったとはいえ、30%くらいに留まっています。

育児休業を取得すると収入が大きく減ってしまうことが、男性の育休取得率が低い原因の一つだと言われています

政府が目標としているのは、2030年までに男性の育休取得率を85%に引き上げることですので、まだまだ全然届いていません。

それをどんどん高めていくために、まずは出生時育児休業の取得といったものも増やしていこうという目的もあって、この出生後休業支援給付という制度がスタートするということです。

今回は、「2025年4月~、出生後休業支援給付が始まります!」についてお話をしました。

少しでも参考になれば幸いです。

執筆者
志賀 直樹

社会保険労務士法人ジオフィス代表

300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。

保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員

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