断続的な宿直または日直の勤務は、労働基準監督署の許可を受けることで、通常の労働時間から除外することができます。認められるための基準などについて社労士が解説します。

こんにちは。社愛保険労務士の志賀です。

今回は、「宿直、日直は労働時間にならないの?」についてお話をします。

前回の解説で、「休日の電話当番は原則労働時間にはなりません。けれども、その場合には何らかの手当を払ってくださいね。」と、そして「その時の手当の金額の目安は宿日直手当の額に準じて、電話当番をする労働者の賃金1日平均額の3分の1程度が目安になりますよ。」というお話をしました。

今回は、その時に詳しくお話をしなかった「宿日直手当」を含めて、「宿直、日直」のお話をしていきたいと思います。

まず、この宿直と日直はどういうものなのかということなのですが、この2つを合わせて当直(あるいは宿日直)と言われたりします。

当直も宿日直も同じ意味です。

これは、通常の勤務時間外に交代で見回り、電話応対、非常事態に備えて待機などの勤務をすることをいいます。

通常の勤務時間外とは、夜間あるいは休日の昼間といった、本来は勤務時間ではない時間であり、当直は一般的に断続的労働(ずっとやり続ける労働ではなく、仕事をやったり休んだりを繰り返す、労働密度が薄い勤務状態)に当たるものだとされています。

そして通常、当直は交代制や当番制です。

これを夜間にすると宿直といい、休日の昼間など日中にすると日直となります。

当直(あるいは宿日直)の業務は通常、断続的労働のはずです。

ですから、これには労働基準監督署の許可を受ければ、通常の労働時間を除外して算定できるというルールがあります

つまり、断続的労働を夜間や休日に行った場合、それは残業時間や休日出勤にカウントしないということです。

これが、いわゆる労働基準法でいうところの当直(あるいは宿日直)というものになります。

ただし、いくら呼び名を当直や宿日直などと呼んでいても、その時間に通常の勤務をしているのであれば、これは単なる夜勤や休日出勤となり、残業手当や休日出勤の割増手当を払わなければいけません。

あくまで当直(あるいは宿日直)は、断続的労働となります。

例えば、非常事態に備えて待機をしている中で、本当に非常事態が起きてしまって、ちょっとした対応ならいいのですが、そこから非常事態に対する対応がガッツリと始まってしまったのであれば、その時点から労働時間の扱いになります。

さて、当直(あるいは宿日直)勤務を行うときには、労働基準監督署に許可申請を出す必要があります。

許可申請書を提出し、その労働基準監督署長が許可を出してくれれば、当直(あるいは宿日直)は通常の労働時間ではないということになります。

許可を得られていなければ、いくら断続的労働と言っても、当直(あるいは宿日直)は認められず、単なる夜勤や休日出勤の扱いとなります。そこは注意して下さい。

そして、この許可はなかなかハードルが高いのですが、いくつか基準がありますので、それをこれから説明していきます。

許可基準

①ほとんど労働する必要のない勤務

時々見回る程度、あまりかかってこない電話番など、時々の対応であること

②通常の労働の継続ではない

例えば定時が9時~18時の会社があったときに、9時~18時の時間働いた後にそのまま同じ場所で同じ仕事をやり続ける場合(夕方位に電話がかかってきて電話対応している間に18時を過ぎた場合など)、18時以降は宿直になるかというと、そうはならず、きちんと労働時間に算入されなければいけませんし、通常の業務を延長でずっとやっているようなものは宿直とは認められません。

③宿日直手当が支払われている

前回、電話当番の手当は、この宿日直手当の額を参考にして、3分の1程度の額が目安になるのではないでしょうかというお話をしました。

この電話当番の手当はあくまで目安であり、法律で定められているわけではないのですが、宿日直が許可される条件としては、この宿日直手当がきちんと所定の額が払われていないと認められません。

それでは、その宿日直手当の額はどれぐらいかというと、「宿日直をすることが予定されている労働者の1人1日平均額の3分の1以上」これが払われていないと認められないというわけなのです。

例えば、3人で当直をする場合

Aさん 月給340,000円

Bさん 月給370,000円

Cさん 月給424,000円

3人の平均の月給は378,000円となり、1日当たりの額に直すと、

378000÷21×1/3=6,000  よって、宿日直手当は6,000円以上となります。

④日直は月1回、宿直は週1回まで

これは原則です。
上限回数が決まっているので、毎週毎週やっているケースはだめですよ、ということです。

⑤睡眠設備がある(宿直の場合)

これは宿直の場合ですね。ベッドや寝具が置かれていて、そこで睡眠をとることができる環境が整っていることも許可の条件となります。

こういったことを申請書に記入して、現地調査も受けるわけですが、なかなか認められるハードルが高いです。

それでも、上記の条件をクリアして、労働基準監督署長が「労働基準法上の断続的労働として宿日直に当たるよ」と認めてくれた場合には、当直(あるいは宿日直)は通常の労働時間としてカウントしない、ということになります。

いかがでしたでしょうか。

先ほども説明しましたように、労働基準監督署の許可を受けないでこういうことをやっているのは論外として、仮に、しっかり許可申請をし、労働基準監督署の許可を受けて当直(あるいは宿日直)の体裁を整えてやっていたとしても、実は中身をよく見てみたら断続的労働に当たらず、忙しく働いていたのであれば、それは当直(あるいは宿日直)には認められず、労働時間としてカウントしなければなりません。

もし、そこを当直(あるいは宿日直)として、労働時間に入れずに宿日直手当の支払いだけでやっていたとすれば、こういったものが否定されたときには未払い賃金があるという状態になりますし、その労働時間数をカウントしてみたら36協定の上限時間数を超えてしまって、36協定違反という形になってしまう可能性もありますので、十分ご注意していただけたらと思います。

今回は、「宿直、日直は労働時間にならないの?」についてお話をしました。

少しでも参考になれば幸いです。

執筆者
志賀 直樹

社会保険労務士法人ジオフィス代表

300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。

保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員

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