休日に会社の携帯電話を従業員に持たせ、会社あてにかかってきた電話が転送されるように設定して、それに対応させるケースが時々見られます。このような場合は労働時間にあたるのでしょうか?社労士が解説します。

こんにちは、社会保険労務士の志賀です。

今回は「休日の電話当番は労働時間になるか」についてお話しします。

会社によってはお休みの日に電話当番というのを交代ですることがあります。

ここで言っている電話当番というのは、休日に従業員さんに会社の携帯電話を持たせて、たまにかかってくる転送された電話に対応させることを言っています。
基本的にその電話は鳴らないのだけれど(会社のお休みですからね)、ただ中には緊急の電話をかけてくる人とかもいらっしゃるので、会社の電話から携帯電話に転送されるようにしておいて、その携帯電話を従業員さんが交代で持つと。お休みの日に。それがもし鳴ったらその電話に出て対応する、このようなことをやっている会社があります。

その電話当番をやった時、休日ではなくて労働時間になるんじゃないのか。こういう風に考える方もいらっしゃるんですね。今回はそのお話なんですけれども、いきなり結論を言ってしまいますと、原則として労働時間にはなりません

意外に思われた方が大勢いらっしゃると思うのですけれども、少し勉強されている方は、例えば昼休みに電話当番をしたケースですよね。電話がかかってきたら出なければいけない、出てねと言われている場合、これは休憩をとったことにはならず労働時間になるのだという知識がある方。

これと同じじゃないの?労働時間になるんじゃないの?という風に思われたかもしれません。

それからビル管理会社の従業員さんが夜間に仮眠をしている時間、これが労働時間になるというような有名な判例がありますよね。こういった事をご存じの方は、これも労働時間になるんじゃないのかなという風に考えたかもしれません。

そのビル管理会社の仮眠時間というのは、もし警報が鳴ったりしたらすぐに起きて対応しなきゃいけない、電話がかかってきたらでなきゃいけないというような状態で仮眠をしている、決められた所定の場所で仮眠をしている。こういうのは労働時間ですよという判例があるんですね。

ですからそういうことをご存じの方は労働時間じゃないかと思うと思うのですが、これはならないんですね原則として。

なぜ労働時間にならないの?

なんでなのかということなんですけれども、まずこの携帯電話を持っていたとしても、あまりそれは鳴らないし、たまに鳴ったらそれにちょっと出てお話すればいいだけなので基本的にはどこで何してても自由だと。行動がまず自由なんですね。普通に休日遊びに行っていても何してもいいわけなので行動が自由。

それから場所の拘束がないということですね。

先ほどのビル管理会社の場合にはその管理室の所定の場所で仮眠してなきゃいけないというのが決まってましたけど、休日の電話当番は別にどこにいてもいいと。家に居てもいいしどっか遊びに行っててもいいし、要はもし鳴ったら出ればいいというだけなので、場所的な拘束がない。

電話当番ねと会社に出てこさせて、会社にずっと居させて電話が鳴ったらでてねと。これをやったらもちろん労働時間ですよね。これ場所的な拘束ありますから。

これがただその携帯持って1日普通に休日過ごして万一その電話が鳴ったら出て頂戴ね、というだけであれば一般的に労働時間にはならないとされてるんですね。

労働時間になるケース

ただしなんですけれどもこういうようなケースは労働時間になる場合がありますよ。

例えばその頻繁に電話がかかってくる。たまにじゃないと。もう10分置きに電話が鳴りっぱなしみたいなことだったりとか、あるいはその1回の通話が長時間に及んじゃうと。もうなんかクレームの電話の窓口みたいになっててずっとそこでもう30分も1時間もそれ以上も話さなきゃいけないとかそういうのが何回かかってきちゃうとか。

あるいは緊急連絡が入ってそこからもう緊急出動なり対応が始まると。

こういった場合はもう業務ですよね。

そこから実際に関係各所に電話をかけまっくて対応を協議してまたこちらでその取引先に電話をかけてとかだったり、そのトラブルを解消するためにも自ら出動していくとか。

これはもうそうなったら労働時間ですけども、ただ単に携帯を持って歩いてかかってきた電話に出てちょっと話す。今日お休みなのでまた明日ご連絡しますねとかそれは担当に伝えておきますねとかで切る。それだけであれば原則として労働時間にはならないということになります。

電話当番を命ずるなら・・・

ただ違和感を感じる方が多いんじゃないかなと思います。そもそも休日に会社の携帯を持って、これ鳴ったら出ろと命令をされるわけですね。
それに応じる義務あるの?それやらなきゃいけないんですか?と、こういう疑問を持つ従業員さんの方も当然いらっしゃると思うんです。

それに対しては就業規則や雇用契約書に規定しておく必要ありますよね。就業規則であったり雇用契約書にもあらかじめこういった休日に電話当番を交代でやってもらうことがありますよと、そういったものが労働条件の中に組み込まれている必要はあるかと思います。

それがそういった電話当番を命ずる根拠になるということなんです。

それからですね、こういう風に考える方いると思うんですよね。

はっきり言って嫌だな、電話当番嫌だなと。嫌ですよね。いくら行動が自由とか場所はどこにいてもいいとか言われても会社の携帯持って歩かなきゃいけないという時点で精神的にストレスというか負荷がかかっちゃってますよね。

それで鳴ったら出なきゃいけないわけですから常にそれを気にしてなきゃいけないというわけなんですよね。ですからそういう電話当番を全くやらないで普通に休日過ごしているのとはちょっと違いますよね、この電話当番の日は。心理的に負荷がかかるから率直に言って嫌だなと思っている方もいると思うんですね。これはもう当然だと思うんですね。

これに対してはやはり私はそこに何等かの手当が支給されるべきであるという風に思います。会社はこういう電話当番を命ずるのであれば手当を支払うべきと考えます

この電話当番の日は別に労働時間じゃないというわけなので、その人の通常の賃金あるいは割り増しして賃金を払うということではなくていいと思いますけれども、何らかの手当が支給されないと従業員さんからすればちょっと納得性が低いんじゃないのかなと思います。

これは出張の移動時間ともちょっと似た話ですよね。

以前にも別動画でお話ししてるんですけども、出張の労働時間も労働時間じゃなかったですよね。ただ一定の拘束は受けてます。出張先へ向かわなきゃいけない、乗り物の中にいなきゃいけないという一定の拘束を受けてるので、その乗り物の中でいくら自由に過ごしていいっていっても一定の拘束を受けていることに対してやはり何らかの手当が支給されるべきではないですか、というようなことを別動画でお話ししてます。これとちょっと似たようなことなんですけども、こういった負荷がかかってますからね。

じゃあいくらが妥当なのかという事なんですけど、これ別に法律でこの電話当番の手当はいくらじゃなきゃいけないって決まってるわけじゃないんですが、目安ですね。賃金額の3分の1ぐらいが目安という風に考えていいんじゃないのかなと思います。

時給換算して1500円の人がいたら時間当たり500円というわけなんですね。

3分の1というのはどこから出てきたのという風に思われるかもしれないんですげど、実は宿日直手当の最低額なんですね。

宿日直に関しては別動画でやろうと思いますけれども、宿直というのは病院だとか社会福祉施設なんかでそこに泊まり込んで見回りをしたり電話が鳴ったら出たり、あるいは何か必要に応じて短時間で終わるようなちょっとした作業を行うとかそういうためにも夜間待機するのが宿直で、それを昼間にやると日直で、合わせて宿日直っていうんですけれども、一定の条件を満たして労働基準監督署に認められれば通常の労働時間と異なる扱いをしていいというルールがあるんですね。
ただしその時に認められる条件として宿日直手当が支払われていることというのがあって、その宿日直手当の最低額というのが、その宿日直をする労働者の平均的な日給額以上は払ってください。こういうルールがあるんですね。ですからそれに準じて考えるとその賃金額3分の1程度のものは支給するのが妥当なんじゃないのかなという風に思います。

いかがでしたでしょうか。従業員さんに何らかの負荷がかかっている時にはそれが労働時間であろうがなかろうが何らかの手当てを支給するべきだという話をしました。 手当てとは元々そういうものなんですよね。
子供のころ、お腹が痛いときにお母さんがお腹に手を当ててさすってくれると不思議と痛みが和らいで心が穏やかになった記憶はないでしょうか。これは直接手を当ててさすられることで幸せホルモンが分泌されるからだそうです。
会社も従業員さんに対して手当を支給することでその従業員さんの苦痛に対してしっかり配慮していますよ、ご苦労様ね、という気持ちを伝えることが大切ではないのかなという風に思います。

今回は「休日の電話当番は労働時間になるのか」についてお話をしました。少しでも参考になれば幸いです。

執筆者
志賀 直樹

社会保険労務士法人ジオフィス代表

300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。

保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員

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