こんにちは。社会保険労務士の志賀です。今回は「高収入の人は厚生年金の保険料が上がります!」についてお話します。
令和7年6月に年金制度改正法が成立し、いくつかの重要な変更が決定されました。そのうちの1つ厚生年金保険料の上限の引き上げについて今回はお話をしていきます。誰でも理解できるように順を追って説明していきますので最後までよろしくお願いします。
まず厚生年金保険料はどういう風に決まるのかご説明をします。

厚生年金保険料というのは上記の通り求めます。この標準報酬月額というのは社会保険料の計算のために便宜的に定めたみなし給与額となります。その標準報酬月額というものまず決めて、そこに対して厚生年金保険の保険料率18.3%を掛けます。そうすると厚生年金保険料が算出できます。厚生年金保険料は会社と従業員さんで折半負担となります。よって18.3%と記載していますが、会社が9.15%、従業員本人も9.15%の負担となるわけです。緑の数字で記載していますが仮に標準報酬月額が22万だとすると、その22万円に18.3%を掛けるわけですから40,260円となり会社と本人で折半なので20,130円ずつの負担となります。
ではこの標準報酬月額というのがまだ少し分かりづらいと思いますので詳しく見ていきます。この標準報酬月額がどのように決定するかということなのですが、従業員本人の報酬額を料率表に当てはめて見ていきます。報酬額とは一体何なのか、これは簡単に月給額だと思ってください。もちろん月給制の方だけではなく時給制の方や日給制の方もいると思いますが、1か月にどのぐらい稼いでいるか、それから諸手当も含むため通勤手当や残業代も含みます。
1か月の賃金のことをここでは月給額と呼びますが、その月給額というのは原則として4月・5月・6月の3か月に実際に支払われた月給額の平均を取って考えます。それを毎年やっているのが算定と呼ばれるものです。そして平均を取って月給額を見たときにどこの標準報酬月額に当てはまるのか料率表を見ていきます。下記参考図をご参照ください。

まずこの1番安い標準報酬月額は88,000円ですが、これは月給額が93,000円未満の方は88,000円という標準報酬額が決定されます。これが厚生年金保険の1等級という一番低い標準報酬月額となります。その次の2等級を見ていくとこれは93,000円~101,000円の範囲ですので、この幅に収まっているならばその方の標準報酬月額は98,000円という風に決定されます。この等級というのは現在は1等級から32等級まであります。全て書ききれないので途中省略していますが、一番高い32等級を見ていくと635,000円以上の方は650,000という標準報酬月額が決定されるわけです。現在はこの等級が一番高いので月給額が100万であろうと200万であろうと635,000円以上であれば650,000円という標準報酬月額となります。なぜこのような上限を決めているかということですが、1つは将来貰う年金額に大きな差がつかないため、極端に違いが出ないためということがあります。それから保険料というのは先ほどお伝えしたように会社と従業員で折半負担となりますので、双方の負担を考慮して上限を定めてあるということになります。
しかしこの上限を750,000円まで引き上げようというのが今回の改正のポイントです。ただしいきなりこの750,000円になるわけではなく、これは段階的に引き上げられることになっています。下記タイムスケジュールをご覧ください。

まず2027年9月に680,000円という標準報酬月額が設定されます。32等級の上に新たに1つ設けられるわけです。月給額としては665,000円以上の方が680,000円の標準報酬月額となります。その次に2028年9月には更にもう1つ上の710,000円という等級が設けられます。そして2029年9月には750,000円の等級が新しく設けられる予定です。
この段階的な引き上げに対して高収入の方がどれほど保険料が増えるのか見ていきましょう。

月給額が730,000円を超える場合は2029年9月に引き上げられる新たな等級750,000円に該当しますが、その場合保険料は自己負担・会社負担共に月約9,100円ずつ増えることになります。保険料が増えれば将来貰える年金額も増えるわけですので、年金額としては月約5,100円増える計算です。これは750,000円の標準報酬月額で10年保険料を納めた場合の試算です。保険料が増えることにあまり良い気持ちがしない人がいるかと思いますが、現在の等級は650,000円が上限となっているので、それ以上に稼いでいて高収入だった方は保険料が打ち止めになっている状態なので現役時代の賃金に見合った年金額を受け取れていない状態にあったものを引き上げによって見合った年金額を受給できるようにするための改正となります。
月に約9,100円保険料が上がるのに年金額は約5,100円しか増えないのは損ではないか疑問に思う人もいるかもしれません。この年金というのは生きている限り何十年でも貰えるものです。しかし保険料というのは払う期限がありますので、そこまで払ったら終わりということになります。よって長く生きれば生きるほど得します。20年でも30年でも生きれば得するようになっていますので長生きしていただければと思います。
いかがでしたでしょうか。今回のお話は標準報酬月額が65万円を超えるような高収入の人に対して関係するお話となります。標準報酬月額が65万いかの人は関係なく今まで通りということになります。タイトルに記載したように今回は保険料が上がるということをピックアップして導入に入りましたが、最後にお話ししたように保険料を多く払うということは将来貰える年金額も増えるということです。
今回は「高収入の人は厚生年金の保険料が上がります!」についてお話をしました。少しでも参考になれば幸いです。

執筆者

志賀 直樹
社会保険労務士法人ジオフィス代表
300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。
保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員


