全国転勤の可能性のある社員に対して、その負担やリスクを考慮して上乗せされる賃金を「転勤プレミアム」と言います。近年、この「転勤プレミアム」の在り方が見直されています。なぜ、どのように変わってきているのか、社労士が解説します。
こんにちは。社会保険労務士の志賀です。今回は「なぜ転勤プレミアムは変わりつつあるのか?」についてお話をします。
「転勤プレミアム」とは何なのかというお話ですが、転居を伴う転勤の可能性がある社員に対し、その負担・リスクを考慮して賃金を上乗せする制度のことを言います。転勤とは近場ではなく他の都道府県や引っ越しを伴う転勤(全国転勤)のことです。
負担やリスクとはどのようなものかと言うと、今現在は転勤を命じられていないが、いつ命じられるか分からない不確実性の中で勤務しているということなので生活設計に影響を及ぼす可能性があります。例えば育児・介護との両立、マイホームの購入時期、子どもの教育、配偶者のキャリアなどです。このように転居を伴う転勤には家庭に大きな影響を及ぼすので場合によっては離職の原因にもなります。その負荷に対してお金を割増して払うというのが転勤プレミアムとなります。
転居を伴う転勤の可能性がある社員のことを全国転勤社員と言ったりします。会社によっては国内だけでなく海外転勤もあり得ます。これに対して転勤の可能性がない社員のことを勤務地限定社員と言うこともあります。この両者にはやはり負担やリスクを考慮して賃金差があることが多く、例えば基本給を増額したり手当として支給する会社が多くあります。勤務地限定社員は昇進や昇格に上限が設けられているが、全国転勤社員に上限はないなど、そのような差がつけられることもあって転勤プレミアムの一種となります。
実際に転居を伴う転勤というのは負荷がかかるものです。先ほどお伝えした以外にも転居費用・社宅費用・単身赴任手当・帰省旅費・転勤一時金などが支給されることも多いです。ただしこれは実際に転勤が発生した時に支払われるものです。転勤プレミアムは実際には発生していないが、発生するかもしれないという状態でその不確実性に対して支払われるものですので、それが実際に転勤した時との違いになります。

この転勤プレミアムが今日のタイトルにもしたように変化し始めています。それは共働き世帯の増加、働き方の多様化、価値観の変化などを背景に変わりつつあります。共働き世帯の増加は今は当たり前になってきていて、夫は正社員で妻はパートということではなく夫婦どちらも正社員というのが非常に多くなってきています。そして働き方の多様化という面では典型的なものはテレワークです。場所を選ばず仕事ができることも最近では増えています。また価値観の変化ですが、ワークライフバランスのことです。早く出世したい場合には全国転勤を受け入れることが王道の時代もあったかと思いますが、昇進はしなくていいから家庭や自分を大事にしたいという考えがある人も増えてきています。
色々な考え方がある中で、実際にどのような変化があるのかというお話ですが、先ほど説明したように転勤プレミアムの在り方というのは「転勤の可能性に対する事前の一律上乗せ(固定)」で支給されるものが従来の形でした。しかし、さまざまな変化を背景に「実際に転勤している期間に手当を支給(変動)」するというような在り方に変化しつつあります。
いかがでしたでしょうか。全国転勤を受け入れなければキャリア形成ができないという制度設計では優秀な人材の確保は難しくなるかもしれません。働き方の多様化や価値観の変化などにより転勤プレミアムは大きな転換期を迎えているようです。
今回は「なぜ転勤プレミアムは変わりつつあるのか?」についてお話をしました。少しでも参考になれば幸いです。
執筆者

志賀 直樹
社会保険労務士法人ジオフィス代表
300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。
保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員


