退職後の傷病手当金と失業保険(基本手当)は支給要件が相反するために同時に受給することはできません。しかし、ある方法により両方受け取ることができるようになります。社労士が解説します。

こんにちは。社会保険労務士の志賀です。今回は「退職後に傷病手当金と失業保険を両方もらう方法は?」についてお話をします。

在職中に傷病手当金を貰っていた方が会社を退職する時に退職後も一定の条件を満たせば引き続き受給可能ですというアドバイスをすることがありますが、その時によく聞かれるのが失業保険も貰うことはできるのかという内容です。今回はそれについてお話をしていきます。

失業保険というのは正確には雇用保険に基本手当のことです。会社を退職して求職活動をしているが、失業状態の場合に雇用保険の方からお金が貰える制度です。皆さんもよくご存知かと思います。失業手当や失業給付と言われたりすることもあります。一般的には失業保険ということで馴染みがあるものですので、この動画の中では失業保険という言葉を使っていきたいと思います。

退職後の傷病手当金については既に別動画で詳しく解説していますのでそちらをご覧ください。簡単にポイントだけ説明します。

退職後の傷病手当金

①退職日までに1年以上、健康保険の被保険者である。

②退職日時点で傷病手当金を受けているか、受ける条件を満たしている。

③同じ傷病で退職後も労務不能が引き続いている。

※退職日に出勤したらOUT ※支給開始から通算1年6カ月まで

※断続しての受給は不可   ※自分で申請する(会社の証明不要)

このように何点か注意点がありますが、条件を満たせば傷病手当金的には受給可能というわけです。以前の別動画にコメント欄に質問いっぱいいただいたのですが、多かったのが退職日以降国民健康保険に加入したけど退職後の傷病手当金を受けられるのか?というものでした。回答しては国民健康保険に加入しても、どこの保険に加入しても退職後の傷病手当金は条件を満たせば問題なく受け取ることが可能です。

それでは傷病手当金を受けながら失業保険も両方貰うことはできるのかについて話していきます。

①同時に受給することはできない(併給不可)

別動画でも最後の方に触れていますが傷病手当金と失業保険は同時に受給することはできません。つまり併給不可となります。

・傷病手当金  → 労務不能

・失業保険    → 働く意思と能力がある人が求職していて失業中

この2つの手当はそれぞれ趣旨が異なるため同時に受給すると矛盾が生じます。

②時期をずらして順番に受給することはできる

  傷病手当金  →  失業保険

同時に受給することはできませんが、時期をずらせば順番に両方受給可能です。順番としてはもちろん最初に傷病手当金を貰います。その次に失業保険を貰う手続きをとれば両方貰うことが可能です。退職後の傷病手当金を貰う条件があるので傷病手当金が先になります。そして労務可能という判断が出れば今度は職探しをしながら失業保険を貰えるという流れになります。

そのために具体的な手続きはどうすれば良いのか方法をお伝えします。

・退職後にハローワークで「受給期間の延長」をしておく

ハローワークの失業給付を受け取るためには退職後1年以内という期限があります。しかしそれまでに労務可能の判断が下りるか分からず失業保険の期限を過ぎてしまう可能性があるため「受給期間の延長」申請をしておく必要があります。この延長は最大4年間です。

・就労可能になったら「延長解除」と「求職の申し込み」をする

延長した期間内に労務可能になれば延長解除と求職の申し込みをすることにより今度は失業保険の受給が可能です。添付書類等は最寄りのハローワークに直接確認してください。失業保険の受給も直接ハローワークに定期的に出向き失業の認定を受けなければいけない等の決まりがありますので、そちらについても詳細は最寄りのハローワークに確認してください。

このような流れを取れば退職後に傷病手当金と失業保険を両方貰うことは可能となります。

いかがでしたでしょうか。傷病手当金は支給開始から最大通算1年半受給することが可能です。失業保険は上限がそれぞれ異なりますが、最大限貰おうと考える人が中にはいらっしゃいます。今回の例で言うと、傷病手当金を最大1年半貰い、失業保険は給付日数の最大まで貰うということです。既に病気は治っているのに病院でごまかしたり、働く気はないのに求職活動をしているフリをして失業保険を貰い続けていたりすることもあるみたいですが全くオススメできません。やはり長い目で見ると本人が損します。一見全て貰うものを貰いきって得しているような気がするかもしれませんが実はそうではありません。楽して働かずにお金を貰えるという味をしめてしまうと今度まともに働くのが馬鹿馬鹿しくなってしまい、なかなか社会復帰が難しくなるという弊害が出てしまいますので、傷病手当金と失業保険の趣旨を正しく理解してズルすることなく正式な手順を踏んで受給してください。

今回は「退職後に傷病手当金と失業保険を両方もらう方法は?」についてお話をしました。少しでも参考になれば幸いです。

執筆者
志賀 直樹

社会保険労務士法人ジオフィス代表

300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。

保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員

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