従業員を採用する際、内定を出した方から「就業規則を見せてください」と言われることがあります。断ってもいいのでしょうか?社労士が解説します。
こんにちは。社会保険労務士の志賀です。今回は「内定者にも就業規則を見せなければダメ?」についてお話をします。
内定を出した方から就業規則を見せてくださいと言われましたが、見せなければダメですか?という質問を時々いただきます。入社後には当然見せるわけですが、まだ内定段階では見せられませんと断っても良いですよね?と仰る方もいます。結論から言うと、見せられませんと断るのは難しいと思います。やはり内定を出した方から就業規則を見せてくださいと言われたならば、これは見せるべきであるというのが回答なります。それは何故なのか順番に見ていきましょう。
まず内定とはどういう意味なのかというと「始期付解約権留保付労働契約」というものが成立されたことをいいます。難しい言葉にはなっていますが、始期付とは入社時期が決まっているという意味です。それから解約権留保付とは正当な理由があれば会社側はこの内定を取り消すことができるという意味ですが、余程のことがないとこれはできません。例えば新卒採用の場合に学校を卒業できなかったというケース、重大な経歴詐称があったケース、入社までの間に刑事事件を起こしたなど余程のことがあれば解約できますが、それがなければ解約できないということです。このような条件はついているものの、労働契約は既に成立している状態であるということが内定という意味です。
その内定を出した人に就業規則を見せなければいけないのかという話になりますが、就業規則とは労働契約の内容、つまり労働条件が記載されているものです。労働条件が記載されているものなのに閲覧を断るというのは少しおかしな話であって、契約内容がはっきりしないまま皆さんも契約をしたりしないですよね。労働契約を結ぶわけだから、その契約内容を教えてくださいというのは当たり前のことです。労働条件は雇用契約書や労働条件通知書で開示しているから良いのではと考える方もいるかと思います。この契約書は通知書というのはあくまで労働条件の一部が記載されているに過ぎません。この内容は書面交付して明示しなければいけない事項というのは法律で決まっていて、例えば契約期間・就業場所・業務内容・始業終業時刻・休憩・休日・休暇・賃金・退職に関する事項などです。しかし詳細なことは書いておらず、一般的に雇用契約書や労働条件通知書はA4やA3の1枚の紙で交付されることが多いです。そこに事細かく労働条件を書けないので、労働条件に記載のない事項については就業規則の定めによる等書いてあることが多いです。それなのに就業規則が見られていない状態であれば詳細が分からないこととなります。例えば退職に関する事項で解雇事由などがありますが、詳細は就業規則第●条によるなど書いてあるケースの場合にそれは就業規則を見なければ何が書いてあるか分かりませんよね。このようなことから契約書や労働条件通知書が交付されているだけでは足りなくて詳しい労働条件が知りたいから就業規則を見せてほしいと内定者から言われた際にダメだと断るのはできないということです。
そして内定者の方がどうして就業規則を見たいのかと言うと、もちろん労働条件を詳しく知りたいからですが、どんなことなのか下記にまとめてみました。
①なぜ見たい?
・給与体系
・転勤
・休職制度
・服務規律
・副業
などについて知りたいと考える人が多く、雇用時の内容については契約書や労働条件通知書に記載がある場合が多いですが、昇給や評価制度についてまで詳細に記載されていることは少ないと思います。
では逆に会社側がなぜ見せたくないのかをまとめてみました。
②なぜ見せたくない?
・競合他社へ流出
・ネット上へ流出
・他社と比べられて内定辞退
・内定者から質問される
という懸念があるからです。情報漏洩は確かに防ぎたいという気持ちは分かります。しかし内定者から質問されて困るようなことが記載されているのもおかしな話で、法律に沿って就業規則も改訂していく必要があるわけです。冒頭から言っているように結論から言えば、見せなければしょうがないことなので見せるしかないということになります。
それではどのように開示を行えばよいのかまとめてみました。
③どのように開示する?
・来社して読んでもらう
・インターネット経由で閲覧
・コピーを渡す
・PDFをメールで送信
※「漏洩禁止」を明記
このようにいくつかの方法があります。しかし情報漏洩は問題となるので「漏洩禁止」という内容を明記する必要があると思います。
本日のテーマに関する結論は「就業規則は見せるべきである」ということになります。
いかがでしたでしょうか。就業規則を内定者に見せないというのは不信感を抱かれる可能性もありますし、それこそブラック企業なのでは?という情報を拡散されてしまっては大変なことになります。逆に内定者から質問される前に堂々と就業規則を開示すれば信頼できる会社と思われてこの会社を選んで良かったと思われるかもしれません。積極的に見せた方が得策ではないかと思います。
今回は「内定者にも就業規則を見せなければダメ?」についてお話をしました。少しでも参考になれば幸いです。
執筆者

志賀 直樹
社会保険労務士法人ジオフィス代表
300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。
保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員


