育児休業取得後、復職せずに退職するなどの行為が、SNS上で「育休もらい逃げ」と呼ばれ話題になっています。会社はこの問題とどのように向き合えばよいのか、社労士がお話しします。

こんにちは。社会保険労務士の志賀です。今回は「育休もらい逃げ 会社はどうすればよいのか?」についてお話をします。

「育休もらい逃げ」という言葉がSNS上で話題になったりしているようです。これはどういうことかと言うと2つのパターンが存在します。

①育児休業取得後、復職せずに退職

②育児休業取得後、復職して短期間で退職

多くの場合、②のケースというのは有休消化をするために一度復職して残っている有休を全て消化してから辞めるというパターンもあるようです。要するに育児休業は期間が終わったら通常は復職する前提ですが、この①②にも最初から復職するつもりがなかったケースと事情が変わって退職となったケースがあります。どちらにせよ結果的には退職ということになりますが、これらについて法律的に問題があるかというと問題はありません。

そもそも①や②のような行動を取る方は少数派で、SNSでは「育休もらい逃げ」とたたかれているようですが実際には1割も満たないぐらいの人数です。ごく一部の人しかしていないことですし、違法ではないことなので問題はないのですが、SNS上で書き込みをしている方たちは会社側の人というよりも、同僚の方が多いです。同僚の方がずるいということで叩かれることが多いようです。それは育休の方は戻ってくる前提で取得をしているわけですので、育休の間に1人分の欠員が出ても補充をしてくれる場合とされない場合があり、補充がないと残った同僚に負荷がかかるわけですから不平等だと感じる方もいるからです。仮に補充があった場合でも同僚が1から業務を教える必要があるためどちらにせよ負荷がかかることは否めません。お互い様だしということで残った同僚が頑張ったとしても「育休もらい逃げ」のような行為をされてしまったら不満が出るのも仕方ないかもしれません。

例えば最初から退職するつもりがあるけれど、それを隠して育児休業を取得しようとする人が何でいるのかということですが、メリットがあるからです。どういうメリットがあるのか説明したいと思いますが、もちろん育児休業は会社を休業してその間育児に専念できるということは当たり前ですが制度的なメリットがあります。

・育児休業給付金がもらえる

・社会保険利用が免除になる

雇用保険から育児休業給付金というものが支給されます。いわゆる所得保障です。働いていないので通常会社からは賃金は出ませんが、その代わり雇用保険から育休業給付金が貰えます。それから育児休業中は社会保険料が免除になります。これは本人も会社も免除となります。育児休業ではない体調不良等の休職は賃金0円でも社会保険料はかかり続けますが、育児休業中は賃金0円でも育児休業給付金は貰うことができ、社会保険料は免除となるような制度的なメリットがあるわけです。このメリットを享受しようということです。

ただこの育児休業制度の趣旨というのは継続雇用の支援です。妊娠出産育児、男性の場合でももちろん育児というライフイベントに直面したからといって会社を辞めなきゃいけないという問題を避けたいために上手に乗り切って雇用が継続できることを支援するというのが育児休業制度の趣旨となります。よって当然復職が前提の制度です。育児休業というのは育児休業を取得してその後退職するということを前提としていないわけです。

このようなことから育児休業が終わって直ちに退職となると、やむを得ないケースももちろんあると思いますが、確信犯的に退職というケースで考えた際に育児休業給付金貰うのはありなのかという考えになり、中には雇用保険料を納めているのだから給付金を貰って当然という方もいらっしゃいますが、実は厚生労働省から以下のようなQ&Aが公表されています。

 当初から退職を予定しているなら給付金の対象外

 復職するつもりだったが、状況の変化で退職した場合、それまでに受給した給付金の返還は必要ない。

このような回答が出ています。ただし最初から退職し復職するつもりなんて1ミリもなかった人と最初から復職するつもりだったが事情があり復職できなかった人というのは見分けがつくものではないと思います。Q&Aとして正式な回答があるものの実際にはすぐ退職するつもりでも現状育児休業給付金は貰えてしまうわけです。返す必要もないということになります。

今回のテーマである育休もらい逃げに関して会社はどうお対応すれば良いのかという話ですが、私の考えを述べさせていただきます。あくまで、もらい逃げが必ずなくなるというわけではないので参考程度に聞いていただければと思います。

まずコミュニケーションが大事だと思います。育休を取得して休んでいる社員さんとのコミュニケーションもそうですが、普段から会話が大事だと思います。やはり育休中は長い間会社に行かないわけですから、何の連絡も全くない状態だと必要とされていないのか、戻る場所があるのかと少し不安になったりするかもしれません。プレッシャーにならない程度に上手くコミュニケーションを取ったほうがお互いに安心できるかもしれません。

それから両立しやすい職場にするということです。両立というのはもちろん仕事と育児のことを言っていますが、仕事と育児がこの会社だったら両立しやすいと思えるような職場作りなど色々あると思います。例えばテレワーク・フレックスを導入する等考えれば色々あるかと思います。次にいまお伝えしたことと繋がりますが微妙な雰囲気を出すことはダメです。例えば育休から復帰する前に面談をしてその中で短時間勤務・残業免除希望などが出てきたときに会社側が微妙な反応をするはやはり良くないです。

ここまでは育休取得者に対しての対応をお話しましたが、育休取得者の代わりに業務を担っている同僚にもねぎらいや詳しい説明が必要かと思います。

そしてロールモデルがいると1番想像しやすいかと思います。実際に育休を取得して復職してそこからキャリアを継続している方がいると自分もそういう風になりたいと思って復職に対しての不安が少なくなるというのもあるかもしれません。逆にマミートラックという言葉がありますが、育休から復職して本人が希望していないにも関わらず業務内容を変えたり配置転換をしてキャリアパスから外されちゃうと会社が良かれと思って部署を異動させても結果的にその人のキャリア形成を阻害してしまうというのも中には存在します。それを目の当たりにするとここでは育休から復帰しても不安が残りそうだと考えてしまう可能性もありますので注意してください。

いかがでしたでしょうか。「育休もらい逃げ」というインパクトのある言葉ですが、このような行為をする人を責めるというよりは、この会社で働き続けたいと思えるような職場作りをする方がこの問題の本質ではないのかなと思います。

今回は「育休もらい逃げ 会社はどうすればよいのか?」についてお話をしました。少しでも参考になれば幸いです。

執筆者
志賀 直樹

社会保険労務士法人ジオフィス代表

300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。

保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員

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