過労死や過労自殺などの労災認定に際して、労働基準監督署がスマートフォンに記録されたデジタルデータの活用を進めています。

こんにちは。社会保険労務士の志賀です。今回は「スマホのデータを分析して労災認定」についてお話をします。

過労死、過労自殺などの労災認定に対して労働基準監督署が個人のスマートフォンに記録されたデジタルデータを活用しているという記事が2026年4月20日の読売新聞の夕刊に掲載されていました。今回はこの内容をご説明しながらお話していきたいと思います。

記事の中に掲載されていたお話になりますが、当時65歳の工場勤務の男性が自殺を図り、ご遺族が長時間労働が原因で業務災害ということで労災申請をしていました。そして都内の労働基準監督署が労災認定としました。この自殺は「長時間労働による精神疾患が原因」であるということで認定をしたという記事です。この自殺の原因が業務かどうか、業務災害かどうか判断する上で重要な判断材料となるのが残業時間です。やはり長時間労働というのはこのような結果を招くと想定されることが多く、ご遺族の方は男性が帰りが遅かったりして長時間残業をしていると分かっていたので労災申請をしたわけですが、会社側と労働者側(今回は遺族)の主張は食い違うことが多いです。

今回の件についても会社側が提出した出退勤記録を見ると残業がほとんどなかったという見解でした。労働基準監督署が認定の可否を調べる上で会社側には資料の提出を求めることが多いです。当然出退勤記録の提出も求めたはずで、記録方法等詳細については記事の中では明らかになっておりませんが、会社側から提出された資料では残業がほとんどなかったということでした。しかし、遺族側がそんなはずはないということで手がかりとしてスマートフォンに記録された位置情報データを提出しこれが決め手となったということです。この位置情報データを分析していくと、連日長時間工場にいたということが分かったわけです。さらに同僚の証言があり、それらを考慮して確認したところ直前1か月の時間外労働は173時間と判断され労災認定となりました。これはとてつもなく多い時間外労働です。過労死ラインをはるかに上回っています。この結果から今回の労災申請は業務災害で労災認定されたということになります。

今回はアプリの位置情報データが決め手になったということですが、他にもスマホなどのデジタルデータを参考にすることが増えているようです。例えばスマートウォッチと連携するアプリに記録された睡眠時間・インターネットの検索履歴・歩数計データなども参考にされることが多いようです。記事のように労働者側と会社の主張が食い違った場合に根拠としてスマホに記録されたデジタルデータの活用はこれからますます増えていくと思います。

いかがでしたでしょうか。会社側は労災認定されたくないので長時間労働はなかったと言いたくなるわけですが、事実と異なる出退勤記録を提出しても今回のようにデジタルデータによって嘘が発覚したりすることもあり得ます。データの改ざんをしないことはもちろんですが、人が死んでしまうような長時間労働を絶対にやめていただければと思います。

今回は「スマホのデータを分析して労災認定」についてお話をしました。少しでも参考になれば幸いです。

執筆者
志賀 直樹

社会保険労務士法人ジオフィス代表

300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。

保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員

プロフィールをもっと見る>>

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です