社会保険の加入条件を満たした状態で、2社以上かけもちで勤務すると社会保険はどうなるんでしょうか?必要な手続きについて社労士が解説します。
こんにちは。社会保険労務士の志賀です。今回は「2社以上かけもちで勤務すると社会保険はどうなる?」についてお話をします。
タイトルに2社以上掛け持ちで勤務と書きましたが、正確に言うと2社以上で働いて、それぞれの会社で社会保険の加入基準満たした状態で働いている場合に社会保険はどのようになるのかというお話です。
まず社会保険の加入基準についてお話をしていきます。
【社会保険に加入する人】
・(報酬のある)役員
・正社員 40h
・正社員の3/4以上働く人 30h
・短時間労働者(特定適用事業所で週20時間以上働く人) ※特定適用事業所とは従業員51人以上の会社
※①週の所定労働時間が20時間以上 ②月額賃金88,000円以上 ③2か月超の雇用見込 ④学生でない
働いている会社が特定適用事業所で週20時間以上働いていれば社会保険加入基準を満たしますので、例えば2社経営していてどちらでも役員だということもありますし、片方の会社では役員でもう1つの会社では正社員だとしてもこれも該当となります。どちらの会社でも20時間以上働いている場合にはどうすれば良いのかということになりますが、このような方を二事業所勤務者と言って両方の会社で社会保険に加入しなければいけません。
ではどのような手続きによって2社で社会保険に加入していくのか説明していきます。

上図のようにA社で働いて社会保険に加入している方がいるとします。その方が今度はB社でも勤務するようになりました。B社でも社会保険の加入要件を満たす形で働いています。その時にどのような手続きが必要なのかということですが、ここでは両社共に健康保険が協会けんぽだと仮定してお話をします。
まず両方で社会保険に加入することはできないので、どちらで社会保険に加入するか選択する必要があります。この選択方法には特にルールがなく報酬が高い方を選ぶなど決まりはありません。例えば同じ協会けんぽでも支部、つまり都道府県によって保険料率が変わりますので安い方を選ぶということも問題ありません。メインの事業場をどちらにするか選びます。今回の例ではメインの会社をA社とし、こちらを主たる事業場と言います。そして管轄の年金事務所に二以上事業所勤務届というものを提出する必要があります。図では簡単に記載しておりますが、正式名称は「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」と言います。本来はこの届出は被保険者つまり本人が提出する必要がありますが、実務をしていない人には分かりにくいものなので一般的には会社側が提出しています。一方でB社では資格取得届を管轄の年金事務所へ提出します。
では提出後の社会保険料がどのようになるか確認していきます。
仮にA社での報酬額が30万、B社での報酬額が20万だったとします。それぞれで社会保険料を計算するのではなく、まず報酬額を合算します。そうすると50万となりますので標準報酬月額は50万円となります。その合算した標準報酬額に保険料率をかけて保険料を計算します。保険料は報酬の額で按分していきますのでA社では3/5、B社では2/5を負担する形となります。もちろん保険料は従業員と会社で折半負担です。健康保険も厚生年金保険も考え方としては同じです。この按分計算というのは年金事務所が算出してくれます。その後各社に請求が届くのでそれぞれ納めるという形になります。
いかがでしたでしょうか。従来はこの二以上事業所勤務者は片方または両方で役員をしている方の手続きが必要になるケースが多かったですが、社会保険の適用拡大によってパートタイマーの方が2社でかけもちで働いていて要件を満たす場合にも二以上事業所勤務届の提出が必要になってくるケースはこれから増えていくと思います。漏れのないように手続きをしっかり行っていただければと思います。
今回は「2社以上かけもちで勤務すると社会保険はどうなる?」についてお話をしました。少しでも参考になれば幸いです
執筆者

志賀 直樹
社会保険労務士法人ジオフィス代表
300社以上の労務管理をサポートしてきた経験を活かし、頻繁な法改正への対応や労働トラブル解決を中心に、中小企業に寄り添ったサービスを行う。
保有資格
・特定社会保険労務士
・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリア・コンサルティング技能士
・産業カウンセラー
・生産性賃金管理士
・日商簿記1級
・ラジオ体操指導員


